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『ドガの小さな踊り子』(パトリス・バール振付)、『ランデヴー』(ローラン・プティ振付)、『オルフェウスとエウリディケ』(ピナ・バウシュ振付) [映像(コンテンポラリーダンス)]

 七月のNHK BS プレミアムシアターは、「ダンス特集」ということで、7月9日の23時30分から翌日3時45分まで、パリ・オペラ座公演を三本放映。録画しておいてやっと鑑賞しました。

 まずは、パトリス・バール振付『ドガの小さな踊り子』。ドガの時代の華やかだが頽廃したパリ・オペラ座を背景に、夢破れた踊り子の悲劇を描く作品。何しろ出演者リストが凄いことになっています。

 主役を踊るのは、クリールマリ・オスタ。そのダンスにも、ちょっとロリ入った健気な少女に(本当に)見えるあたりも、感心させられます。いかにもナルナル~なバレエ教師を踊るのはマチュー・ガニオ、楽しそうです。その生徒たちは、もちろん本物のパリ・オペラ座学校の生徒たちが踊っています。「エトワール」という素晴らしい役を踊るのはドロテ・ジルベール。少女の憧れの対象なんですが、その気取った浮きまくった感じが素敵です。

 オペラ座の常連客(まあ要するに売春宿通いの小金持ち)を踊るジョゼ・マルティネスの小物感も楽しく、怒りの表現がものすごい母親役はエリザベート・モーラン。画家はバンジャマン・ペッシュ。何とまあ、誰も彼もキャラが立ってます。

 作品としては手堅くまとめた感があり、最初から最後まで、名ダンサーたちのダンスをあまり構えずに楽しめました。夢やぶれた少女と画家の最後のパ・ド・ドゥは感動的で、ノイマイヤー振付の『人魚姫』のラストなど連想しました。

 二本目はローラン・プティ振付の『ランデヴー』。テーマは「避けられない死」。終演後のカーテンコールで、よくみると、ダンサーたちの背後に、真っ黒な背景に溶け込むように静かにたたずんでいるプティの姿が映っています。後で知ったことですが、まさにこのとき、プティは亡くなったとのこと。確認しようと思って録画を再生してみたところ、プティの姿はどこにもありませんでした。

 というのは嘘ですが、放映された7月10日にプティが息を引き取ったというのは本当です。実は、鑑賞する直前にそのニュースを知ったもので、追悼気分で観ることになりました。カーテンコールで舞台に登場したプティの姿に、ちょっとじーんと来たり。

 代表作の一つ『若者と死』の原型みたいな作品で、ニコラ・ル・リッシュ踊るところの若者が、イザベル・シアラヴォラが踊る運命の女(ファム・ファタール)に見入られて死ぬという話。ル・リッシュはこういう追い詰められる役が似合いますねえ。ただ、後に作られた『若者と死』に比べると、密度と緊迫感が不足している感は否めないかも知れません。

 最後は、ピナ・バウシュ振付『オルフェウスとエウリディケ』。グルックのオペラの現代改作で、ヤン・ブリダールとマリ・アニエス・ジロが踊ります。総合的な演出で神話的世界を構築する前半、一転ダンスの力だけで濃密な心理劇を表現してのける後半、いずれも感服する他はなく。この舞台、以前に市販映像を観たときに感想を書いてます。詳しくは2010年05月18日の日記を参照して下さい。

 というわけで、ピナ・バウシュに続いてローラン・プティも亡くなってしまい、さらに次回7月16日夜のプレミアムシアターは、モーリス・ベジャール特集だそうで、何だか「最近亡くなった世界的コレオグラファ追悼」の映像が続いているような気がします。次々回の特集はノイマイヤーだそうで、どうか何事もありませんように(不謹慎)。


『ドガの小さな踊り子』

振付: パトリス・バール
出演: クリールマリ・オスタ、パリ・オペラ座バレエ団、パリ・オペラ座バレエ学校
収録: 2010年、パリ・オペラ座ガルニエ宮

『ランデヴー』

振付: ローラン・プティ
出演: ニコラ・ル・リッシュ、イザベル・シアラヴォラ、パリ・オペラ座バレエ団、パリ・オペラ座バレエ学校
収録: 2010年10月7日、パリ・オペラ座ガルニエ宮

『オルフェウスとエウリディケ』

振付: ピナ・バウシュ
出演: ヤン・ブリダール、マリ・アニエス・ジロ、パリ・オペラ座バレエ団
収録: 2008年、パリ・オペラ座ガルニエ宮


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