『クロノリス -時の碑-』(ロバート・チャールズ・ウィルスン) [読書(SF)]
20年後の未来から次々と送り込まれてくる巨大モノリス。「着弾」の衝撃で破壊される都市。未来からの攻撃をどうやって防げばいいのだろうか。ほとんど脱力もののお馬鹿SFネタとシリアスな家族ドラマを融合させる手口はさすが『時間封鎖』の作者。キャンベル記念賞受賞作品。文庫版(東京創元社)出版は2011年5月。
『時間封鎖』、『無限分割』、『無限記憶』、もう漢字四文字の邦題しかつけてもらえないのではないかと思われていたロバート・チャールズ・ウィルスンですが、あえてカタカナで来ました。クロノリス、それは20年後の未来から時の流れを越えてやってきた巨大な石碑。それが「着弾」するとき、その衝撃で出現地点周辺の都市は破壊されます。
なぜクロノリスが20年後からやってきたと分かるかというと、台座に年月日と送り主である未来の独裁者「クイン」の署名がしっかり刻まれているからです。さすが独裁者らしい自己顕示欲。
次々と着弾するクロノリスによって破壊されてゆく各国の都市。世界規模の経済破綻と混乱、そして紛争。はたして人類は一致団結してこの「未来からの攻撃」を防ぐことが出来るのだろうか。
といいつつ、20年後というのが実に微妙。これが200年後ならともかく、20年後なら自分は生きているだろうし、その時点でクイン(それが誰であるにせよ)が世界を支配しているのなら、今のうちからクイン支持に回った方が有利ではないか。そう考える者が出てきます。
かくして、若者を中心としてクイン支持派が増え、母親は生まれた子どもをこぞって「クイン」と名付け、あちこちで「私こそ本物のクイン」と名乗る指導者が現れて信奉者を集める、という次第になります。なるほど、人類が一致団結して未来の独裁者と戦う、なんていうシナリオより、こちらの方がありそうだよねえ。
お馬鹿SFでありながら、妙に生真面目な家族ドラマが展開するのも、いかにも『時間封鎖』の作者らしいところ。主人公は、最初にクノロリスが着弾したとき妻と娘をほったらかして現場に野次馬として駆けつけ、そのせいで離縁されてしまうという、情けないコンピュータ技術者。どうしてこんなことになったのか、いったい誰のせいで家庭崩壊してしまったのか。本人の弁によると。
「そのすべての責めを、わたしはフランク・エドワーズに負わせたい」(文庫版p.14)
責任転嫁するにせよ、せめて「これも全てクインのせいだ。オレは必ずヤツを倒す」とか言えばいいのに、つい正直になってしまうところがしょっぱい。
ちなみにフランク・エドワーズというのは、超常現象本やUFO本をいっぱい書いた人。私だってオレンジの背表紙の角川文庫「超自然の謎シリーズ」など読み漁り、『超自然の謎』とか『ストレンジ・ワールド』とか『しかもそれは起こった』とか、お気に入りでしたけど。そうか、私がいまひとつうだつが上がらない人生を送っているのも、フランク・エドワーズのせいだな。
この真剣にダメな若者である主人公が、最初のクロノリス着弾から20年の歳月を生き延びるうちに人間として成長してゆき、かなりダメな中年男になるまでの家族ドラマが展開される、これが本筋です。そっちか。
クロノリス着弾によってクイン支持者が増え、彼らの支持により独裁者が世界を支配し、やがて過去に向かってクノロリスを発射する、この時間ループをどのようにして断ち切ればよいのか。
このあたりに、時間SF的に目を見張るような冴えたアイデア、あるいは馬鹿SF的にぶっとぶような凄いオチがあるかと申しますと、実は最後まで読んでもそういうものはありませんので、過大な期待をしてはいけません。
というわけで、導入部のアイデア一発が素晴らしくて、その後は延々と家族ドラマが続き、まあそうだろうな、という感じで終わってしまう、何とも微妙な作品。もう少しSF的に頑張って欲しかった気がします。てか、もしや著者が書きたかったのは、時間SFでも馬鹿SFでもなく、家族小説だったのでしょうか。ええーっ。
『時間封鎖』、『無限分割』、『無限記憶』、もう漢字四文字の邦題しかつけてもらえないのではないかと思われていたロバート・チャールズ・ウィルスンですが、あえてカタカナで来ました。クロノリス、それは20年後の未来から時の流れを越えてやってきた巨大な石碑。それが「着弾」するとき、その衝撃で出現地点周辺の都市は破壊されます。
なぜクロノリスが20年後からやってきたと分かるかというと、台座に年月日と送り主である未来の独裁者「クイン」の署名がしっかり刻まれているからです。さすが独裁者らしい自己顕示欲。
次々と着弾するクロノリスによって破壊されてゆく各国の都市。世界規模の経済破綻と混乱、そして紛争。はたして人類は一致団結してこの「未来からの攻撃」を防ぐことが出来るのだろうか。
といいつつ、20年後というのが実に微妙。これが200年後ならともかく、20年後なら自分は生きているだろうし、その時点でクイン(それが誰であるにせよ)が世界を支配しているのなら、今のうちからクイン支持に回った方が有利ではないか。そう考える者が出てきます。
かくして、若者を中心としてクイン支持派が増え、母親は生まれた子どもをこぞって「クイン」と名付け、あちこちで「私こそ本物のクイン」と名乗る指導者が現れて信奉者を集める、という次第になります。なるほど、人類が一致団結して未来の独裁者と戦う、なんていうシナリオより、こちらの方がありそうだよねえ。
お馬鹿SFでありながら、妙に生真面目な家族ドラマが展開するのも、いかにも『時間封鎖』の作者らしいところ。主人公は、最初にクノロリスが着弾したとき妻と娘をほったらかして現場に野次馬として駆けつけ、そのせいで離縁されてしまうという、情けないコンピュータ技術者。どうしてこんなことになったのか、いったい誰のせいで家庭崩壊してしまったのか。本人の弁によると。
「そのすべての責めを、わたしはフランク・エドワーズに負わせたい」(文庫版p.14)
責任転嫁するにせよ、せめて「これも全てクインのせいだ。オレは必ずヤツを倒す」とか言えばいいのに、つい正直になってしまうところがしょっぱい。
ちなみにフランク・エドワーズというのは、超常現象本やUFO本をいっぱい書いた人。私だってオレンジの背表紙の角川文庫「超自然の謎シリーズ」など読み漁り、『超自然の謎』とか『ストレンジ・ワールド』とか『しかもそれは起こった』とか、お気に入りでしたけど。そうか、私がいまひとつうだつが上がらない人生を送っているのも、フランク・エドワーズのせいだな。
この真剣にダメな若者である主人公が、最初のクロノリス着弾から20年の歳月を生き延びるうちに人間として成長してゆき、かなりダメな中年男になるまでの家族ドラマが展開される、これが本筋です。そっちか。
クロノリス着弾によってクイン支持者が増え、彼らの支持により独裁者が世界を支配し、やがて過去に向かってクノロリスを発射する、この時間ループをどのようにして断ち切ればよいのか。
このあたりに、時間SF的に目を見張るような冴えたアイデア、あるいは馬鹿SF的にぶっとぶような凄いオチがあるかと申しますと、実は最後まで読んでもそういうものはありませんので、過大な期待をしてはいけません。
というわけで、導入部のアイデア一発が素晴らしくて、その後は延々と家族ドラマが続き、まあそうだろうな、という感じで終わってしまう、何とも微妙な作品。もう少しSF的に頑張って欲しかった気がします。てか、もしや著者が書きたかったのは、時間SFでも馬鹿SFでもなく、家族小説だったのでしょうか。ええーっ。