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『私たちは眠らない』(東野祥子、BABY-Q) [舞台(コンテンポラリーダンス)]

 昨日(2011年3月6日)は、東野祥子ひきいるダンスパフォーマンスグループ「BABY-Q」の新作公演を観るために、夫婦で三軒茶屋シアタートラムに行ってきました。

 観客の頭を揺さぶる大音響ノイズミュージック、テトリスブロックみたいな大道具、零細工場あるいは錬金術師の工房を連想させるような雑多なガジェット類、謎の小芝居、劇的な照明効果、くらくらしてくるアート系映像、さらにはバイオリン生演奏まで、様々な表現手法を組み合わせた、その混乱っぷりが魅力的なパフォーマンスです。ダンスもその奇怪な構造物を支える表現の一つとなっています。

 BABY-Qは、「ダンサー、ミュージシャン、役者、映像作家、美術家、コスチュームデザイナー、ロボット制作家などからなるメンバーそれぞれが、個々のセンスや時代性を多角的に組み合わせた作品製作を行い、舞台芸術からサブカルチャー、現代音楽シーンなど多方面で活動を行う」(公式ウェブページより)グループだそうで、なるほど、各メンバーがそれぞれ自分のやりたいことを全力でぶつけたような、錯綜したパワーを感じさせます。

 大道具の使い方(舞台上にある四つのブロックを、叩いて音を出すなど散々使い倒した挙げ句、組み合わせて十字架を作り、最後はそれを釣り上げる)などけっこう素敵ですが、個人的には「声高に陰謀論をうったえる講演会」のパフォーマンスがお気に入り。

 激しい音割れのせいでノイズと化した講演ですが、不思議なことに、耳をすませると「新世界秩序・・・人口半減計画・・・人工インフルエンザウイルスをばらまいて・・・大型ハドロン加速器LCD・・・作られた経済危機・・・すべては・・・の・・・なのです」みたいな“おなじみの言葉”だけは聞き取れるのです。

 後で配偶者に確認してみると、「UFOと宇宙人の隠蔽工作」について何か言っていた、という認識だったので、もしかしたら観客一人一人が異なる言葉を聞き取る聴覚ロールシャッハテストなのかも知れません。洗脳かも知れません。

 そういえば、何度か登場する丸に三角の映像(ときどぎ三角の中にまばたきする目が現れる)とか、怪しい儀式とか、大量虐殺とか、舞台から観客席に向けて強烈な光が放たれるシーンとか、いちいち秘密結社や陰謀論の香りが漂っている気もします。

 そんな得体の知れないパフォーマンス連打のなかにあってもなお、東野祥子さんのダンスは強烈な印象を残してくれます。糸がからまった操り人形のような、手足がうまく制御できないギクシャクした感じを中心に、機械のように動いたかと思うと、ふと意識が戻って混乱したり、かと思うと床にゆっくり倒れて、手足を昆虫のように動かしたり、観ていてぐいぐい引きつけられます。

 実は東野さんは公演全体を通じて踊っているのですが、何しろノイズや照明など他の表現の「主張」が激しいためあまり目立たず、むしろ最初というか、開演前のソロダンスが最も印象に残りました。

 BABY-Qのパフォーマンスを本格的に観たのは初めてなのですが、これけっこうイイかも、という印象は受けました。機会を見つけて他の公演も観てみようかと思います。

[キャスト]

演出・振付・出演:東野祥子
演出・音楽:カジワラトシオ
映像:Rokapenis(斉藤洋平)
美術:OLEO
衣裳:ペーどろりーの
出演:ケンジル・ビエン、pee、吉川千恵、井田亜彩実、鈴木拓朗、斎藤亮、加藤律、もっしゅ(岩佐妃真)ほか
LIVE演奏=及川景子/MTR(CARRE)


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