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『エビはすごい カニもすごい -体のしくみ、行動から食文化まで』(矢野勲) [読書(サイエンス)]

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 本書は、このような「すごい」と思えるエビ・カニの巧妙な体のしくみと行動やしぐさについて紹介する。さらに、なぜそのような体のしくみを持ったり、行動やしぐさをとるのかについても説明した。
 ちなみに、そのいくつかを紹介すると、テッポウエビは、ハサミをパチンと鳴らして、その音で小エビなどの獲物を狩っている。また、サンゴ礁に棲む多数のテッポウエビがパチンと鳴らす音は、サンゴの幼生をサンゴ礁に呼び寄せることが明らかになっている。実は、この音は単なる音でなく、閃光とプラズマを放つ強い音圧の衝撃波である。本書では、その「すごい」と思えるスナップ音の発生のしくみを明らかにしている。
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「はじめに」より


 主に食材として親しまれているエビやカニ。しかしその生態は意外と知られていない。衝撃波とともに閃光とプラズマを放つテッポウエビ、数十万尾がいっせいに隊列を組んで渡りをするロブスター、武器として利用するイソギンチャクをクローニングするキンチャクガニ、そして感情表現豊かなカニ。エビとカニが持つ「すごい」と思える体のつくりや行動を紹介してくれる一冊。単行本(中央公論新社)出版は2021年12月です。




目次
第1章 エビ・カニとはどのような生き物なのか?
第2章 エビ・カニの五感と生殖
第3章 さまざまなエビたちの生態と不思議な行動
第4章 さまざまなカニたちの生態と不思議な行動
第5章 エビ・カニの外骨格の秘密
第6章 エビ研究の最前線からー交尾と生殖の解明
第7章 赤い色を隠すエビ・カニたち
第8章 私が愛したエビ・カニたち
第9章 エビ・カニの肉質の特徴と食文化




第1章 エビ・カニとはどのような生き物なのか?
第2章 エビ・カニの五感と生殖
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 自然界におけるフィロソーマ幼生とプエルルス幼生の暮らしの実態は、長い間、不明であったが、同じイセエビ下目のセミエビやウチワエビなどのフィロソーマ幼生が、海洋を浮遊するカラカサクラゲやミズクラゲなどのクラゲに取り付いていることが発見されている。この発見から想定すると、イセエビのフィロソーマ幼生も、クラゲの上に乗って広い海洋を漂いながら浮遊生活を送っている可能性が高い。仮に事実としたら、なんとも可愛らしい話である。
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単行本p.58

 エビ・カニの体の構造から生活史まで、まずは基礎知識をまとめます。




第3章 さまざまなエビたちの生態と不思議な行動
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 テッポウエビが餌とするクリーナーシュリンプが棲むイソギンチャクを外敵のファイヤーワームから守る習性は、まさに人類が野山を整備して食料などにする羊などを放牧する牧畜に似ている。(中略)仮にそうだとすれば、テッポウエビは人類が牧畜を始めるはるか以前の太古の昔に、牧畜の起源と思える、すごい行為をすでに行っていたことになると私は考えている。
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単行本p.87

 魚の口内を掃除するクリーナーシュリンプ。その棲息環境を調整して「牧畜」の対象とするテッポウエビ。そのテッポウエビが閃光とプラズマ衝撃波を放つしくみ。渡り鳥のように渡りをするコウライエビやフロリダロブスター。エビたちの「すごい」生態を紹介します。




第4章 さまざまなカニたちの生態と不思議な行動
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 イソギンチャクを持つキンチャクガニと持たないキンチャクガニを一緒に置くと、イソギンチャクを持たないキンチャクガニは、相手からイソギンチャクを奪うことを報告している。(中略)闘いを始めてから奪い取るまでの時間はなんと7時間ほどもかかり、両者の闘いはまさに死闘と言っても過言ではない。
 この後、イソギンチャクを奪い取ったキンチャクガニも奪い取られたキンチャクガニも、片方のハサミに挟んだイソギンチャクを縦に均等に2つに割って両ハサミに挟んで無性生殖を誘発しクローンを複製する。
 またシニッツァーたちはこのカニがハサミに挟むイソギンチャクの遺伝子を調べた。結果、各カニが持つ左右のハサミのイソギンチャクの遺伝子はまったく同じであり、他のカニのイソギンチャクとも互いに極めてよく似た遺伝子を持っていた。このことから、紅海に棲むキンチャクガニがハサミに挟むイソギンチャクは、もともと1つの個体であったことを示唆している。
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単行本p.121、122

 ズワイガニ、ガザミ、モクズガニ、サワガニなどの行動から、イソギンチャクを武器として使うキンチャクガニまで、さまざまなカニの「すごい」生態を紹介します。




第5章 エビ・カニの外骨格の秘密
第6章 エビ研究の最前線からー交尾と生殖の解明
第7章 赤い色を隠すエビ・カニたち
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 エビ・カニは、体を守るために外骨格を硬く堅固な組織にしただけでなく、比重を高くするために石灰化し、しばしば起きる飢餓に備えての栄養物質を貯蔵し供給する機能も持たせ、さらに外骨格に沈着したカルシウムを自由に出し入れするという、まさにすごいと思うほどのダイナミックな組織にしているのである。
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単行本p.141

 外骨格が果たしている様々な機能から赤い色をつくる色素アスタキサンチンが果たしている役割まで、エビ・カニの体のしくみをさらに詳しく見てゆきます。




第8章 私が愛したエビ・カニたち
第9章 エビ・カニの肉質の特徴と食文化
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 クルマエビが死んだふりをすることは、これまでまったく知られていなかったが、私は何度か人に話してきた。そうするとまず10人中10人が笑いながら「うそっ」と言う。なぜうそと思うのかと訊き返すと、エビにそんな高等なまねができるはずがないという答えが返ってくる。死んだふりは、賢い人間が熊に出会ったときにするもので、知能の低いエビにできるはずがないとはなから思っている。そこで私も、ついむきになって、エビ・カニの知能は発達していて、ときには人間以上に賢い行動をとると言い返す。
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単行本p.214

 弱いものいじめをするカニ、著者といっしょに遊ぶカニ、エサが遅れてムカついたので水草を切りまくって抗議したカニ、死んだふりをするエビ。著者が観察したエビ・カニの知能や感情、そして人間との関わりについて紹介します。





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