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『プラテーロと私 4』(勅使川原三郎、佐東利穂子) [ダンス]

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プラテーロはまだ小さいが、毛並みが濃くてなめらか。外がわはとてもふんわりしているので、からだ全体が綿でできていて、中に骨が入っていない、といわれそうなほど。ただ、鏡のような黒い瞳だけが、二匹の黒水晶のかぶと虫みたいに固く光る。
(中略)
 かわいらしくて甘えん坊だ、男の子みたいに、女の子みたいに……けれどもしんは強くてがっしりしている、石のように。日曜日、プラテーロにまたがってわたしが町はずれの路地をとおると、こざっぱりした身なりでぶらぶらやってくる村びとたちが、足をとめてプラテーロをじっと見送る――
 「筋金入りじゃ」
 そのとおり、筋金入りだ。鋼づくり、そして同時に、月の銀いろ。
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『プラテーロとわたし』(J.R.ヒメーネス著、長南実:翻訳)より


 2021年9月4日は、夫婦でKARAS APPARATUSに行って佐東利穂子さんの公演を鑑賞しました。勅使川原三郎さんが原作を朗読し、佐東利穂子さんがロバのプラテーロを踊る上演時間一時間ほどの作品です。

 活発でかわいらしく、でも芯はとても強い、ロバのプラテーロを佐東利穂子さんが踊ります。舞台装置はなく、照明だけで、例えば舞台上に井戸を作り出してみせる印象的な演出。佐東利穂子さんのダンスも快活で楽しそうに見えます。ちゃんとロバに見えるところがすごい。蝶を追っているときは本当に蝶を追っているプラテーロに見えますし、「ボール紙のプラテーロ」が登場するシーンでは本当にボール紙で作ったプラテーロがそこに見えるのです。

 後半は魂のダンスになりますが、ここからが凄くて、もう感動に圧倒されます。ごく小さなステージが広大な空間に感じられ、そこにいる儚くも力強いプラテーロを、詩人とともに遠くから見守っている気持ち。心理的になかなか劇場にゆけなくなっている昨今ですが、やはり目の前で踊っているのを見守るという体験は特別なものだと改めて思いました。





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