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『ハルハトラム 3号』(現代詩の会:編、北爪満喜、白鳥信也、小川三郎、他) [読書(小説・詩)]

 「現代詩の会」メンバー有志により制作された詩誌『ハルハトラム 3号』(発行:2021年8月)をご紹介いたします。ちなみに既刊の紹介はこちら。


2020年05月03日の日記
『ハルハトラム 2号』
https://babahide.blog.ss-blog.jp/2020-05-03

2019年07月02日の日記
『ハルハトラム 1号』
https://babahide.blog.ss-blog.jp/2019-07-02


[ハルハトラム 3号 目次]
――――――――――――――――――――――――――――
『共生』(他三編)(水嶋きょうこ)
『この森』(小川三郎)
『ガラスのスカート』(他一篇)(北爪満喜)
『美しい毛並み』(恵矢)
『ちきゅう』(他二篇)(小林礼佳)
『風脚』(佐峰存)
『「表札」』(沢木遥香)
『雨季の間』(島野律子)
『月のシール』(白鳥信也)
『ママのにおい』(橘花美香子)
『何から』(長尾早苗)
――――――――――――――――――――――――――――

 詩誌『ハルハトラム』に関するお問い合わせは、北爪満喜さんまで。

北爪満喜
kz-maki2@dream.jp




――――
水の音が止まらない
庭のフェンスにからむ
つる薔薇の枝が伸びている
どこかで朽ちたひとつの命を枝先に重ね
次の生へと貪欲に
巻きつく先を求めているのか
水の音は激しくなる
隣家の窓のカーテンが揺れた
――――
『共生』(水嶋きょうこ)より全文引用


――――
何処まで見渡してみても山ばかりのここで
あの山の向こうには
何があるだろうなんて
あの雲の中には
なにがあるんだろうなんて
そんなことはもう
考えもしないで
ずっとずっと暮らそうかね。
それがいいね。
霧はどんどん深くなるね。
森も木々も
一緒になって
どんどんどんどん
深くなるね。
――――
『この森』(小川三郎)より


――――
部屋の隅までは見えないけれど
ドールハウスのテーブルのように
小さいテーブルが床にぽつんとあって
その前に前掛けをした小さい義母がいる
食卓を共にし続けてきたけれど
だいぶ前にもう見送っている
そうかお寺の中なので
こうして現れていつもの姿で

部屋には黒い艶やかな大きなピアノがある
その上に何か置こうとしてやめる
私はピアノを弾かないのになぜ
美しいピアノを眺める
あっ これもお寺の中だから
――――
『耳を澄ます』(北爪満喜)より


――――
木漏れ日がまぶしい
新品のスーツを誇らしげに着た私が
自転車で風を切っていた
緑道を抜けて帰路につくと
表札が風を受けて鳴いていた
動くことで自分を表現しようとする私には
表札の鳴き声はなめらかで
私はとてもくるしかった
見知らぬ島の上で日ごと思い出すのは
愛しい人でも大事に育てた花でもなく
あの表札のことだった
――――
『「表札」』(沢木遥香)より


――――
朝になると
洗面器は緑色や黄緑色の何かちいさなものでいっぱいで
水面が見えない
小さなものはコメ粒ほどの虫
無数の虫がびっしりと洗面器の水をおおっているんだ

  兄ちゃんこれなんだ
  ウンカだっちゃ
  ウンカは月のシールを食べに窓の隙間から入ってきたんだっちゃ
  こんなにいっぱいよってたかって

  月のシールはどこにもねえが
  ウンカは水に食べられたんだべ
――――
『月のシール』(白鳥信也)より





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