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『魔法 その歴史と正体』(カート・セリグマン、平田寛・澤井繁男:翻訳) [読書(オカルト)]

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 この本の目的は、一般の読者に、西洋文明世界における魔術的な思想と作用とを簡潔に説明することにある。(中略)
 魔術は、主として二つの違った方法で取り扱われてきた。学者たちの専門的な著作は、特殊なタイプ、方面、時代にかぎられており、一般には学術的な読者のために書かれている。ところが一方、党派心のある隠秘論者たちが、真実を特殊な枠にはめこんで狭い体系にねじ曲げるだけで、ほとんど事実にもとづかない考えを解説した、どうかと思われるような出版物が無数にある。ただ少数の著者だけが、魔術に関して一般的読者のために書いている。そして本書は、この最後の部類のものであることがわかっていただけるであろう。
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単行本p.5


 古代メソポタミア文明から中世を経て18世紀欧州まで、西洋世界における魔術やオカルトに関する思想史を解説した名著の復刻版。単行本(平凡社)出版は2021年1月、Kindle版配信は2021年1月です。

 1948年に出版されて以来、一般読者向け魔術史書の決定版として広く読み継がれてきた名著です。日本でも1961年に平凡社より世界教養全集の一冊として翻訳されその後のオカルトブームを盛り上げ、1991年には人文書院より完訳版が出版、そして今回、2021年に改めて平凡社から出版された復刻版、それが本書です。

 魔術、魔法、呪術、悪魔、魔女、占い、占星術、錬金術、吸血鬼、怪人、秘密結社、……。驚くほど幅広い話題を簡潔に解説してくれます。それぞれの話題について一般読者にとって必要十分な情報が書かれており、特にオカルトやホラーの文脈で言及されることが多い用語、固有名詞、人名についてもれなく取り上げられているところが嬉しい。200点をこえる図版が収録されており、ページをめくるだけで高揚します。

 700ページ近い大作ですが、むしろこれだけ広い話題についてよくこのページ数にまとめたなあと感心します。世に出回っている西洋魔術解説書の多くが本書をベースにしており、また小説・コミック・アニメなどの娯楽作品に登場する印象的なネーミングや設定の元ネタもだいたい本書で解説されています。そういう意味で、特に西洋魔術史に興味がなくとも、基礎教養として読んでおきたい一冊です。


〔目次〕

メソポタミア
ペルシア
ヘブライ
エジプト
ギリシア
グノーシス説
ローマ帝国
錬金術
中世
悪魔
魔法
悪魔の儀式
七人の肖像
カバラ(ユダヤ教の神秘説)
魔術
改革者たち
一八世紀





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