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『むくめく む』(関かおり、PUNCTUMUN) [ダンス]

 2020年2月29日は夫婦でシアタートラムに行って関かおりさんの新作公演を鑑賞しました。関かおりさんを含む7名が出演する上演時間65分の作品です。


[キャスト他]

演出・振付: 関かおり
出演: 内海正考、後藤ゆう、酒井和哉、清水駿、杉本音音、髙宮梢、関かおり


 砂利が敷きつめられ、あちこち灰色の岩が点在しているという、石庭そっくりの舞台。よく見ると岩にみえるのは毛の固まりのようで、砂利も硬くない素材で出来ていることに気づきます。舞台周囲は黒い垂れ幕によってまるく囲まれており、そこから出演者が舞台上に出入りします。会場に漂うのはやや刺激的で新鮮な芳香。橘という柑橘系の香りだと後で知りました。

 会場には雨の降る音がずっと流れており、人里はなれた森の中とか、境内の一角とか、そういう場所をじっと観察している気持ちに。公演がはじまると雨音はやみ、ときどき物音や声や音楽の断片が流れて非現実感を高めます。紙をめくる音など背後から聞こえてくると客席の物音なのかどうか判断できず混乱したり。

 その石庭に、謎の生き物たちが登場。今回は、微生物や菌類のコロニーといった感じではなく、小動物の巣を連想させます。小動物たちの胸と背中には毛が生えているのですが、股間からも二房の毛が垂れており、それがすごく変な印象を与えます。たぶん未発見の新種。

 その生き物たちが様々な動きをするのですが、どれも慣れ親しんだ人間の動きではありません。見たことがない不思議な動き。じっと観察します。冒頭に四人で組んで行う動きがあった他は、一人で動くか、二人で組んで動くか。

 今回はときどき出演者が表情を浮かべるのにびっくり。曖昧ながら意志や意識のようなものが感じられ、どうやら記憶や個体間の関係性のようなものもあるらしい。ですが、文脈というか脈絡が読めないので、たまたま人間っぽく見えるだけではないか、こちらが勝手に擬人化しているのではないか、という疑念がぬぐえず、不気味の谷に逆接近というか、ちょっと不安な印象を受けます。

 初めて見たと感じられる動きが、次から次へと途切れることなく登場するのは本当にすごい。道具なしに人間が組んで行うという制約のなかで、これだけ動きのバリエーションが出てくるというのは驚異的ではないでしょうか。美しい動きやかっこいい動きを見られる公演は数多くありますが、今ここでしか見られない動きを観察する、というのは特異で貴重な体験だと思います。





タグ:関かおり
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