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『レディオワン』(斉藤倫:著、クリハラタカシ:イラスト) [読書(小説・詩)]

――――
 聞こえてるかな?
 でも、もし、外に出ても、どんなに、外に出ても、それでも、つらくて、くるしくて、けっきょく、この世のにんげんの、だれひとり、じぶんのみかたなんか、いないって。
 そう、おもったら。

 それでも、だいじょうぶ。
 ぼくたちが、いる。
――――
単行本p.82


 ラジオ番組〈レディオワン〉のDJであるジョンは、本人が「犬」だという設定で犬から見た人間のことを語るスタイルで大人気。だが一部のスタッフを除いて誰も知らなかったのだ。ジョンが本当に犬だということを。そして、リスナーの人々にどれほどの愛を届けることが出来るのかを。
 「飛ぶ教室」の人気連載が、新エピソードを加えて単行本化。犬愛あふれまくる一冊。単行本(光村図書出版)出版は2019年11月です。


月曜夜九時。〈レディオワン〉の時間です。
ぼく、DJジョンが、お送りします。
夜行性のいぬから、夜行性のひとたちに。


[目次]

第一回 リードとリボン
第二回 スイカとライカ
第三回 ケーキとケージ
第四回 リボンとレディオ
放送のあとで
〈特別番組〉ねらわれたジョン




第一回 リードとリボン
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 見た目の色はわからなくても、こころの色はわかる。
 なんて、かっこつけすぎですかね。「いぬは、かなしみのどうぶつ」ということばがあるそうですが、そのとき、ぼくには、かなしみの色が、見えました。
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単行本p.10


 飼い主との楽しい散歩の途中で出会った女の子。その子の悲しみに気づいたジョンは、彼女を何とか元気づけようとするのだが……。


第二回 スイカとライカ
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「まさに、ライカ犬の誕生じゃないか」
 ぼくは、それには、こたえず、ただ、はっはっと、したを出した。だって、そのいぬが、歴史上の英雄になったわけを、しってたから。生きて地球に帰れなかったんだ。
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単行本p.37


 ジョンが人間の言葉を話せるようになった、その秘密に迫ります。


第三回 ケーキとケージ
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「にんげんだけじゃ、もうだめ、ってことね。はたらくようになって、たくさんの傷ついたひとを見ていたら、ますますそうおもった。わたし自身が、こわれそうになった。そんなとき、この子に出あった。なんだ、わたしたちだけじゃないじゃん、って、おもった。このせかいは、にんげんだけじゃないじゃん、って」
「あいが、あったんですか?」
「あいが、あったかって?」
 飼い主は、びっくりしたように、いって、わらった。「いぬには、あいしかないよ」
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単行本p.60


 ジョンと飼い主の出会い。この世には人間だけじゃなくて犬がいること。それでなんとか生きてゆけること。いぬには、あいしかないよ。


第四回 リボンとレディオ
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「こんばんわん!
 今夜は、すこし早いけど、〈レディオワン〉の時間です。
 名まえも、しらない、きみだけのために。
 月も見えない、暗い夜でも、きっと、声ならとどくはず」
――――
単行本p.81


 第一回で出会った女の子。その子が苦しんでいる。悲しんでいる。希望を失っている。そのことを知ったジョンは、彼女を助けるためにラジオ放送局を飛び出して駆けつけようとする。それでも、だいじょうぶ。ぼくたちが、いる。その言葉をきみにとどけるために。あなたに届けるために。


放送のあとで
――――
 ことばは、とても、だいじなもの。
 でも、ことばがだいじなのは、ほんとうにだいじなおもいを、はこんでくれるからなんだ。
――――
単行本p.96


 クリスマス。聖夜。今年最後の〈レディオワン〉。悲しみや苦しみはなくならないけれど、ほんとうにだいじなおもいをはこんでくれる「ことば」があれば、きっとだいじょうぶ。


〈特別番組〉ねらわれたジョン
――――
 だれもが、いつでも、ひつようなひとと、いっしょにいられるわけじゃない。
 おとなも、子どもも。にんげんも、いぬも。それはおなじことだ。
 だから、ぼくらに、できることは、あえるときを、だいじにすることくらいなんだね。
――――
単行本p.140


 ジョンが誘拐された。必死で探し回る飼い主と番組スタッフ。犬と人間の一期一会を描く書き下ろし特別編。



タグ:斉藤倫
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