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『昭和・平成オカルト研究読本』(ASIOS) [読書(オカルト)]

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 オカルトは、昭和の時代をよく知る人たちから、そうした時代をあまり知らず、最近興味を持ち始めた人たちまで、幅広く親しまれるコンテンツともなっているのかもしれません。
 本書では、そうしたオカルトのなかでも、日本に関わるものを中心に集めるようにしました。平成になってもたびたび登場するオカルトの源流を探り、いくつものブームをピックアップし、決して忘れてはならない事件を振り返ります。さらに昭和と平成のオカルトを彩り、支えたテレビ番組、漫画、雑誌、出版社、オカルト研究会、そして人物。それらを次の時代へ記録しておく意味も込めて、取り上げるように努めました。
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単行本p.3


 おなじみASIOS(Association for Skeptical Investigation of Supernatural : 超常現象の懐疑的調査のための会)のオカルト謎解き本。その最新刊は、昭和と平成に起きた様々なオカルト事件やオカルト関連情報を総括する労作です。単行本(サイゾー)出版は2019年6月。


 日本のオカルト事情に絞っているとはいえ、100年という長期間に渡るオカルト史総まとめ本ですから、なかなかのボリュームです。これまでのASIOS単行本で最大の464ページ。執筆者も豪華、いやまじ。内容と目次については、ASIOSブログの記事でご確認ください。


  新刊『昭和・平成オカルト研究読本』が出ます(ASIOSブログ)
  http://www.asios.org/sh_occult


 全体的に恐ろしく手間のかかっている本なのですが、特にオカルト関連のテレビ番組、漫画、雑誌、出版社、関連団体、人物、などのデータをまとめた第5章の情報量と資料的価値には圧倒されます。日本オカルト100年史を後世に残すべし、という使命感をひしひしと感じさせるものがあり、読者からは見えない苦労も含めてどれだけの労力と手間をかけたのか、想像するだけで自然と頭が下がります。

 資料としての有用さだけでなく、読み物としての面白さも忘れてはいません。第1章から第3章までは世の中に幅広い影響を与えたものを中心とした日本オカルト事件史として楽しめ、第4章は様々な視点や立場からオカルトを論じており読みごたえがあります。決して「あの頃の昭和オカルトネタ懐かし」というノスタルジィに流されず、現在も続くオカルトの功罪について真剣に書かれています。

 研究者にとって資料を探すための便利なハンドブックとして、また興味はあるけど実は詳しいことはよく知らないという方のための本格入門書として、手元に置いておきたい一冊です。


 以降では、個人的にお気に入りの第4章の内容について、ざっと駆け足で紹介します。


『超能力捜査番組はなぜ続いたのか』
(本城達也)
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 こうした残念な結果に終わるにもかかわらず、超能力捜査番組は40年以上にもわたって続けられてきた。
 一体なぜだろうか? それは超能力捜査の実態が隠されているからだと考えられる。自称超能力者自身の宣伝や、テレビ番組の演出によって、実態とは違うイメージがつくられているのである。
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単行本p.214


 世間を騒がせている事件をFBI超能力捜査官が解決するという、ある程度以上の世代ならお馴染みのテレビ番組、そのトホホな実態を明らかにします。これまでのASIOS謎解き本に最も近いテイストの検証記事。


『白装束のキャラバン隊を組み、騒動を巻き起こしたパナウェーブ研究所』
(蒲田典弘)
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 スカラー電磁波の発生方法は、電磁波と電磁波を重ね合わせ、波の振幅をゼロにすることだという。(中略)エネルギー保存則が正しいとすれば別のエネルギーに変換されているのではないか…と考えてしまうのは、波の運動について学び始めた初学者が陥りやすい典型的な誤解である。
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単行本p.232


 スカラー電磁波による攻撃から教祖の身を守るため白装束で移動を続けたパナウェーブ研究所、その実態を探ります。新興宗教系オカルト事件となると、宗教団体が加害者、世間やマスコミは被害者、というイメージがありますが、本件は逆だということが分かります。オカルトにはまった人や団体との向き合い方について考えさせられる記事です。


『オカルトとニセ科学―霊感商法や陰謀論と関係するものも』
(蒲田典弘)
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 ニセ科学・オカルトの間ではこういった横のつながりも多く、ニセ科学の理論も相互に補強しあっている。ひとつのニセ科学を信じることで、ほかのニセ科学、さらにオカルト、霊感商法、陰謀論を信じるような道が出来上がっているのである。
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単行本p.244


 軽い気持ちでニセ科学やオカルトや陰謀論に近づくことの危険性について、具体的に教えてくれる記事。反社会的な団体相互のつながりが分かります。


『オカルトと民俗学―その困難な関係性』
(廣田龍平)
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 民俗学自体にとって問題なのは、川森博司氏が2009年の日本民俗学会談話会の発表要旨で指摘したように、「高度経済成長を経て、民俗事象のオカルト的受容という現象が顕著になっており、それにどう対処していくかが現在の民俗学の重要な課題である」はずなのに、ほとんど取り組まれていないことである。
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単行本p.254


 「民俗学」というと、いきなり幻想超古代史から妖怪までオカルト事象が連想されるのはなぜか。民俗学の名のもとに安易なオカルト解釈や根拠のない文化批評がまかり通っている現状についての問題意識にもとづく記事。


『幸福の科学の「霊言」はどこまで突っ走るのか』
(藤倉善郎)
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 著者自身、13年に大川総裁から守護霊を呼び出され霊言として発表されたが、霊言が収録されていた日も一日中、著者の体調等にはとくだん変化がなかった。健康には害がないようだ。
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単行本p.258


 イエス・キリストからブルース・リーまで、幸福の科学の総裁がおろす著名人の「霊言」を追った記事。霊言を言い訳にして存命中の他人を誹謗中傷するなどやり方が卑劣だと思いつつ、「ウンモ星人の霊言」という新機軸で宗教指導者として初めて日本トンデモ大賞を受賞、といった情報に思わず脱力したり。


『テレビ、喫茶店、世界の終わり。日本のコンタクティー・ムーブメントと想像力』
(秋月朗芳)
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 いま人間にコンタクトしてくる宇宙人は、喫茶店でレモンスカッシュを飲みながら地球滅亡を伝えたりしないだろう。このようにコンタクティーの想像力が、時代やメディアと絡み合いながらその表現を変化させているのを見るのも、なかなか趣深いものがあるのではないだろうか。また、この変化を知ることは、現在やこれからのコンタクティーのあり方をうらなうひとつの指針となるかもしれない。
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単行本p.271


 なぜUFOはちょっとさみしいのか、どうして宇宙人は犬に固執するのかなど、他人と共有しづらい問題意識を高く掲げて歩み続けるASIOSの裸眼立体視交差法こと秋月朗芳さんによる浪漫文学的コンタクティー論。なぜ日本人にコンタクトしてくる宇宙人はやたらと喫茶店に入るのか?



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