『書店本事 台湾書店主43のストーリー』(郭怡青:著、欣蒂小姐:イラスト、小島あつ子・黒木夏兒:翻訳) [読書(教養)]
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ここ数年間、台湾には文芸開花の風が吹いているように感じられる。景気が悪いと言われているにもかかわらず、それぞれの理想に満ちた小規模な書店は続々と、台湾のあらゆる街角に芽吹いている。
(中略)
書店主たちは往々にして、ある種の使命感を背負っている。それぞれの書店にはそれぞれの物語や歴史があり、各店主の生命の歌を織りなしている。台湾をぐるっと一周する中で分かってきたこと、それはこの取材が時空を超えた人文科学の旅だということだ。店主の口から語られるストーリーは、書店ごとに異なっていた。私はそこからさまざまな知識のピースを見つけ出し、やがてそれらのピースは台湾近代百年の縮図を形づくった。
特色ある書店とは、読書の多様性を形づくるピースだということだ。これが一番の根底である。
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単行本p.110、422
誠品や金石堂のような大型チェーン店だけが書店ではない。台湾には様々な独立系書店が存在し、たとえ経営が苦しくとも、それぞれの理想と信念、そして誇りを持って書物を扱っているのだ。台湾全土をまわって小規模な独立書店を取材した、書物愛に満ち溢れる一冊。単行本(サウザンブックス社)出版は2019年6月です。
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独立書店がもたらすのは、豊富な知識の花。私たちは読書の画一化を拒み、多様性を死に物狂いで守っています。
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単行本p.120
台湾各地にある43の独立系書店を取材した本です。それぞれの書店について、基本情報、取材した内容、店主の紹介とインタビューが掲載され、素敵なイラストがついています。どのページからも飛び出してくるのは、書店主の熱い言葉。
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もしあなたがとても優れた本を、他の誰にも作れないような本を生み出したとします。その本が出版後に一冊も売れなかったとしても、重要なのは今売れるかどうかではなく、百年後にその本がどんな意味を持つかなんです!
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単行本p.83
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私は花の種を撒いています。それはこの世で最も美しい花、つまり知識の花です。知識の花は永遠にいい香りを放ち、一人一人の心の中で大きく育つのです。
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単行本p.91
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こういった書店を開くことでなんらかの理念を呼び掛けたり、人々に対して幾らかの影響を及ぼすことができると、そこまで思ったことはありません。それでも、ここは小さな、美しい“点”です。そういった美しい“点”がどんどん増えていけば、それが次々につながって、大きな美しい台湾が姿を現す。私はそう信じています。
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単行本p.318
ここには、売れない本には出版する価値がないとか、売れてない作家がベストセラーを批判するなとか、そんな浅はかで幼稚なことをいう人はいません。どのページからも、書物に対する深い愛情と、文化の多様性を守っているという誇りがあふれており、深く心打たれます。熱意もすごい。
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この場に流れているのは、台湾の女性たちの最も純粋な本音。ここは婦人解放運動にとっての文化的な前線基地であり、社会運動の情報プラットフォームなんです。……フェミニストと、社会的弱者に関心を持つ改革者とが並び立つための。
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単行本p.65
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もし読んでみて面白くなかったら、台北-ヨーロッパの往復航空券を差し上げますよ!
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単行本p.86
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本を自分の手元に置いておきたくて、店内にはたくさんの非売品があります。ここの店主は嫌な奴だと思っているお客さんもいらっしゃいます。怒り気味にどうして売らないものを棚に並べるんだ、って言われます。でも私が置きたいから店に並べているんです。
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単行本p.269
書物愛はじける自由さもまぶしい。
台湾観光のついでに書店併設カフェに立ち寄り、書物に囲まれてお茶やコーヒーを飲んでみたいという方。台湾における出版や書店の現状に興味がある方。異国の書店めぐりという(リアルな、あるいは少なくとも想像上の)旅をしてみたい方。そして、理想、信念、情熱、誇り、を持って生きるということを忘れがちなすべての方にお勧めします。
最後に、『歩道橋の魔術師』(呉明益)、『父を見送る』(龍應台)、『星空』(幾米)など数々の台湾文学を翻訳紹介してくれた天野健太郎氏が、本書の企画に加わりながらも最後まで見届けることがかなわなかったことについて、訳者のひとりである黒木夏兒さんが書かれた文章を引用しておきます。
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この打ち合わせと、その後の代々木駅まで僅か5分の道のりが天野さんとの「同じ土俵に立った翻訳者同士」としての最初で最後の時間になるとは思いもよらなかった。訃報が入って1週間くらいは、翻訳を続けようとするたび「どんなにいい翻訳をしても、もう天野さんには読んでもらえないんだ」という思いが涙とともに湧き上がってしまって、どうにもならなかった。
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単行本p.430
ここ数年間、台湾には文芸開花の風が吹いているように感じられる。景気が悪いと言われているにもかかわらず、それぞれの理想に満ちた小規模な書店は続々と、台湾のあらゆる街角に芽吹いている。
(中略)
書店主たちは往々にして、ある種の使命感を背負っている。それぞれの書店にはそれぞれの物語や歴史があり、各店主の生命の歌を織りなしている。台湾をぐるっと一周する中で分かってきたこと、それはこの取材が時空を超えた人文科学の旅だということだ。店主の口から語られるストーリーは、書店ごとに異なっていた。私はそこからさまざまな知識のピースを見つけ出し、やがてそれらのピースは台湾近代百年の縮図を形づくった。
特色ある書店とは、読書の多様性を形づくるピースだということだ。これが一番の根底である。
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単行本p.110、422
誠品や金石堂のような大型チェーン店だけが書店ではない。台湾には様々な独立系書店が存在し、たとえ経営が苦しくとも、それぞれの理想と信念、そして誇りを持って書物を扱っているのだ。台湾全土をまわって小規模な独立書店を取材した、書物愛に満ち溢れる一冊。単行本(サウザンブックス社)出版は2019年6月です。
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独立書店がもたらすのは、豊富な知識の花。私たちは読書の画一化を拒み、多様性を死に物狂いで守っています。
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単行本p.120
台湾各地にある43の独立系書店を取材した本です。それぞれの書店について、基本情報、取材した内容、店主の紹介とインタビューが掲載され、素敵なイラストがついています。どのページからも飛び出してくるのは、書店主の熱い言葉。
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もしあなたがとても優れた本を、他の誰にも作れないような本を生み出したとします。その本が出版後に一冊も売れなかったとしても、重要なのは今売れるかどうかではなく、百年後にその本がどんな意味を持つかなんです!
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単行本p.83
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私は花の種を撒いています。それはこの世で最も美しい花、つまり知識の花です。知識の花は永遠にいい香りを放ち、一人一人の心の中で大きく育つのです。
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単行本p.91
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こういった書店を開くことでなんらかの理念を呼び掛けたり、人々に対して幾らかの影響を及ぼすことができると、そこまで思ったことはありません。それでも、ここは小さな、美しい“点”です。そういった美しい“点”がどんどん増えていけば、それが次々につながって、大きな美しい台湾が姿を現す。私はそう信じています。
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単行本p.318
ここには、売れない本には出版する価値がないとか、売れてない作家がベストセラーを批判するなとか、そんな浅はかで幼稚なことをいう人はいません。どのページからも、書物に対する深い愛情と、文化の多様性を守っているという誇りがあふれており、深く心打たれます。熱意もすごい。
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この場に流れているのは、台湾の女性たちの最も純粋な本音。ここは婦人解放運動にとっての文化的な前線基地であり、社会運動の情報プラットフォームなんです。……フェミニストと、社会的弱者に関心を持つ改革者とが並び立つための。
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単行本p.65
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もし読んでみて面白くなかったら、台北-ヨーロッパの往復航空券を差し上げますよ!
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単行本p.86
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本を自分の手元に置いておきたくて、店内にはたくさんの非売品があります。ここの店主は嫌な奴だと思っているお客さんもいらっしゃいます。怒り気味にどうして売らないものを棚に並べるんだ、って言われます。でも私が置きたいから店に並べているんです。
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単行本p.269
書物愛はじける自由さもまぶしい。
台湾観光のついでに書店併設カフェに立ち寄り、書物に囲まれてお茶やコーヒーを飲んでみたいという方。台湾における出版や書店の現状に興味がある方。異国の書店めぐりという(リアルな、あるいは少なくとも想像上の)旅をしてみたい方。そして、理想、信念、情熱、誇り、を持って生きるということを忘れがちなすべての方にお勧めします。
最後に、『歩道橋の魔術師』(呉明益)、『父を見送る』(龍應台)、『星空』(幾米)など数々の台湾文学を翻訳紹介してくれた天野健太郎氏が、本書の企画に加わりながらも最後まで見届けることがかなわなかったことについて、訳者のひとりである黒木夏兒さんが書かれた文章を引用しておきます。
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この打ち合わせと、その後の代々木駅まで僅か5分の道のりが天野さんとの「同じ土俵に立った翻訳者同士」としての最初で最後の時間になるとは思いもよらなかった。訃報が入って1週間くらいは、翻訳を続けようとするたび「どんなにいい翻訳をしても、もう天野さんには読んでもらえないんだ」という思いが涙とともに湧き上がってしまって、どうにもならなかった。
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単行本p.430
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