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『黒旗 中原中也』(勅使川原三郎) [ダンス]

 2018年12月21日は、夫婦でKARAS APPARATUSに行って勅使川原三郎さんのソロダンス公演を鑑賞しました。中原中也の詩作をもとに勅使川原さんが踊る60分の舞台です。


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 ある朝 僕は 空の 中に、
黒い 旗が はためくを 見た。
 はたはた それは はためいて ゐたが、
音は きこえぬ 高きが ゆゑに。

 手繰り 下ろさうと 僕は したが、
綱も なければ それも 叶はず、 
旗は はたはた はためく ばかり、
空の 奥処に 舞ひ入る 如く。

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『曇天』(中原中也)より


 中原中也の『曇天』に登場する「黒い旗」がテーマになっています。冒頭、暗闇の中からおぼろげに現れる勅使川原さんが握っているのは、長い棒。照明効果によって白く輝き、日本刀のよう。旗竿かも知れません。握り手には光を反射しない黒い手袋をはめているので、まるで刃が宙に浮いているように見えます。

 棒を使った動作、壁に投影された自身の影と向き合うシーン、手のひらに何かを書きつける動きなど、中原中也の詩作の雰囲気を感じさせる場面がどんどん展開してゆきます。照明効果によって勅使川原さんがいたりいなかったり二人いたりするような錯覚が生まれるのがすごい。

 コンピュータゲームのような電子音から、獣の唸り声(『ピグマリオン-人形愛』で使われたものと同じ音源かも知れません)まで、様々なノイズが音楽にかぶさり、さらには多重録音された『盲目の秋 II』の一節の朗読が何度も繰り返し流され、観客の心をかき乱します。


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これがどうならうと、あれがどうならうと、
そんなことはどうでもいいのだ。

これがどういふことであらうと、それがどういふことであらうと、
そんなことはなほさらどうだつていいのだ。

――――
『盲目の秋 II』(中原中也)より


 詩人をテーマにした公演としては、アルチュール・ランボー、萩原朔太郎に続く第三弾ということになるかと思います。ランボーや朔太郎に比べて直接的な表現(ランボーの人生を演じるとか、朔太郎の月を舞台上に再現するとか)を避け、中也の詩作をダンスに翻訳したような公演でした。



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