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『私たちは抗議する 笙野頼子・北原みのり』(”note”掲載 2018年9月20日) [読書(随筆)]

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文学で描かれた陰翳とはまさに文学の力、かすかながらの光という「リアリティ」の厚み、生命そのものなのだ。つまり現実の読者がそれを支えにするケースはあるとしても、読者が主人公に自らを重ねるとしても、現実と虚構は分けるしかない。なおかつ、虚構がデマ、ヘイト、差別助長のためにひどく使われるなら心ある人は怒るしかない。
 そもそも性だけの問題なのか。尊厳の問題だ。しかも社会との関係性の問題である。人は光を求める。社会的存在である。光の下で、好きな人と暮らしたい。
 というかこの痴漢擁護論考、文学についても全体についても論考とも何とも呼べぬ低劣さである。何も言っていない。すべてを貶めて卑怯犯罪や猥褻語で汚し、下劣な一人合点をしているだけだ。
 あるいは最初から痴漢被害者をも侮辱するつもりだったのかも。
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【笙野頼子さんの抗議】より


 シリーズ“笙野頼子を読む!”第120回。

 「笙野さんと怒りを共有し、声をあげます」(北原みのり)
 北原みのりさんと笙野頼子さんが共同で『新潮45』に対する抗議文を”note”に投稿しました。以下のリンクから全文読めます。

  『私たちは抗議する 笙野頼子・北原みのり』(”note”掲載 2018年9月20日)
  https://note.mu/minorikitahara/n/n10df59ba7103

 文中で触れられている『ウラミズモ奴隷選挙』は、来月(2018年10月)出版予定の最新長編です。「文藝」掲載時の紹介はこちら。

  2018年07月09日の日記
  『ウラミズモ奴隷選挙(「文藝」2018年秋号掲載)』
  http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2018-07-09


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思考密度はゼロ、論考としての流れすら立っていない。というか、すべてまぎらかし。結局は性犯罪者の不当擁護と性被害者、差別被害者への自己責任論、さらには顧客を意識してなのか保守エロ語の連発、そこだけがテカテカとどや顔になっている。別に確信犯とか言うレベルでなく、まさにお仲間のいる状況で安心して放つ、本人の「人間性」……、あっ。

 そう言えば、最近ので似たようなのをひとつ思い出した。
 現総理の「テニスや将棋なら」いいのかというあの言説である。主語を違え、論点をずらし、よそごとを言いながら、白目を剥いて胸を張っている。見ていられない。まあ「壮大な宇宙的展開」はついてなかったけど。同じものと言える。
 それはかびの生えた、だだもれ、口先だけその場だけ、言いこしらえれば実態はどうでもいいという、「ひょうげんがすべて」、妖怪ひょうすべの、ひょうすべ節である。
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【笙野頼子さんの抗議】より


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杉田水脈は大学生の頃、偶然、土井たか子さんの演説の場に出会う。当時の総理大臣よりも人気があり、切れのある演説する土井さんの格好良さに憧れたという。その数年後に杉田は土井たか子さんの演説を聞き、妊娠中だった彼女は「お腹をなでてほしい」と土井さんに頼んだという。
私は杉田水脈とほぼ同世代だ。あの当時、山を動かそうとした土井さんの力を、若い女として見上げるように眺めていた私と杉田水脈は、もしかしたら同じ目をしていた。なんという皮肉なのだろう。ものを言う議員に憧れた杉田水脈が、性暴力被害者の口を塞ぐ声をあげ国会議員のバッチをつけているとは。「山は動いた」あの年から、平成のまるまる30年間。この社会が第二の土井たか子を育てるどころか、杉田水脈を産んでしまうとは。
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【北原みのりの抗議】より


 直接的にヘイトのターゲットにされている人々の苦しみ、怒り、絶望には到底およばないのは当然としても、尊厳を傷つけられる痛みや怒りは、どマジョリティ日本中高年男性のそれであっても、通じるものがあるはず、と思いたい。すべての人、というか人というものが侮辱され愚弄されてるんだよ、今ここで。

 とはいえ覚悟のない言葉を放ってもすぐ捕獲され弱い立場の人々を踏むのに利用されてしまうので、せめて捕獲耐性の強い強靱な怒りの言葉を広める手助けをしたい。どうか抗議文を読んで下さい。そして来月出版される『ウラミズモ奴隷選挙』を読んで下さい。『水晶内制度』と違って河出書房新社から出版されるので、葛藤なしに購入できます。

 もう一度、リンクを貼っておきます。

  『私たちは抗議する 笙野頼子・北原みのり』(”note”掲載 2018年9月20日)
  https://note.mu/minorikitahara/n/n10df59ba7103

  2018年07月09日の日記
  『ウラミズモ奴隷選挙(「文藝」2018年秋号掲載)』
  http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2018-07-09



タグ:笙野頼子
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