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『私は言葉を信じないので踊る』(伊藤郁女、伊藤博史) [ダンス]

 2018年7月22日は夫婦で彩の国さいたま芸術劇場に行って、伊藤郁女さんが父親と共演する公演を鑑賞しました。ダンサーの娘と彫刻家の父、欧州と日本、膨大な距離と文化ギャップによって隔てられた二人が、同じ舞台の上に立って、言葉とダンスによるコミュニケーションと関係の再構築を試みる感動的な作品です。上演時間は1時間。


[キャスト他]

テキスト・演出・振付: 伊藤郁女
舞台美術デザイン: 伊藤博史
出演: 伊藤郁女、伊藤博史


 開演の前からゆっくりと動き続ける伊藤郁女さん。舞台の、向かって右手に置かれた椅子に腰掛け、じっとしている父。舞台左手には、黒い布で覆われた謎のオブジェ(床に設置された大型テレビの天井を突き破って脱出に成功したバルンガが急成長しているような形。実は椅子を積み上げて作られていることが最後に分かる)があり、これは彫刻家である父親がデザインしたものだそうです。

 始まる前から、伊藤郁女さんによる様々な「問い」の録音が流れます。なぜ私はこうなのか、どうして世の中はこうなっているのか……。公演が始まってからも父親への問いかけや、事前に録音されたインタビューなどが流れます。あとどのくらい生きると思う? どうしていつも私の彼を気に入らないの? なぜ陰鬱な作品を作るの?

 こうした言葉のレベルでのやりとりと並行して、二人は踊ります。まずは伊藤郁女さんのソロ。まだ人間の動きを習得してない手足が昆虫のように奇怪な動きを見せる幼少期ダンスから、クラシックバレエの動きを経て、独特のダンスへと成長してゆく様を見せます。すでにこのあたりでノックアウト、魅了される。

 途中で父親が立ち上がって歩き出し、踊り始めます。やがてダンスによる交流が楽しげに展開し、いや本当に楽しそうなんですよ、最後は父親不在の舞台に伊藤郁女さんが一人残される。父と娘がダンスによる再会と相互理解を深めてゆくプロセスが、大きな感動を生みます。



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