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『風鈴(「文藝」2018年秋号掲載)』(松浦理英子) [読書(小説・詩)]

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 子供が残酷な目に遭わされた事件をニュースで知った時など、わたしは恐ろしげな大人たちを怯えながら見上げていた井戸の底に引き戻される。そして、暗い井戸の底から見上げる恐ろしい地上の世界が、あんなに明るい光に満ちているのはなぜだろうと不思議に感じる。
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文藝2018年秋号p.287


 井戸に落ちたときの思い出。幼なじみの友だちと都会から来た中学生と三人で風鈴を作った思い出。幼い頃の記憶には、しかし、どのエピソードにも小さな影が落とされているのだった。そして、……。

 大人が見せるささやかな悪意、冷淡さ、子供を傷つける無神経なふるまい。無条件に守られ安心しているべき子供が、実際には、様々なレベルで加害されていることを静かに告発するような短篇。短いページ数で読者の感情を引っ張り回す手際が凄い。


タグ:松浦理英子
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