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『世界を変えた50人の女性科学者たち』(レイチェル・イグノトフスキー、野中モモ:翻訳) [読書(教養)]

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 あらゆる差別を解消し、貧困の苦しみをなくして、誰もが好きなことを自由に学べる社会を築くこと。科学が誰かを傷つけるために利用されるのではなく、様々な問題を解決し、困っている人を助ける平和な世界を実現すること。こうした理想を目指して努力することの大切さを、勇敢な女性科学者たちの人生は教えてくれます。
(中略)
 女性たちは人口の半分を占めており、その頭脳の力を無視してはなりません――人類の進歩は私たちが知識と理解を絶えず求め続けることができるかどうかにかかっています。この本の女性たちは、性別や人種や育ちにかかわらずどんな人でも偉大な仕事を成しとげることができるのだと世界に証明しました。彼女たちの偉業は生き続けます。今日も世界中の女性たちが、勇敢に研究に打ちこんでいます。
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単行本p.3、117


 世界を一変させるような偉大な業績を残しながら、歴史の陰に隠れて無視されがちな女性科学者たち。差別と偏見に行く手を遮られながら、決して諦めなかった女性科学者50人の生きざまを紹介してくれる絵本。単行本(創元社)出版は2018年4月、Kindle版配信は2018年4月です。


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 その昔、女性が教育を受ける機会が制限されるのは決して珍しいことではありませんでした。女だという理由で科学論文を発表するのが許されないこともよくありました。女たちは夫に養われる良い妻そして良い母になることしか期待されていなかったのです。多くの人々は、女性は男性ほど賢くないと思っていました。この本の女性たちは自分のやりたい仕事をするためにこうした固定観念と闘わなければならなかったのです。(中略)女性たちがようやく高等教育を受けられるようになっても、そこにはたいてい落とし穴がありました。彼女たちはしばしば仕事をする場所も研究資金も与えられず、何より存在を認められませんでした。
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単行本p.6


 世界史上最も偉大な古生物学者、世界初のコンピュータプログラマー、アポロ計画を成功に導いた計算手、別々の学問分野でノーベル賞を二度受賞した唯一の科学者、すべて女性だった。原子核分裂、同位体の存在、パリティ保存則の破れ、ダークマターの存在、性決定の仕組み、DNAの二重らせん構造、トランスポゾン、発見したのはすべて女性だった。

 偏見と闘い、研究人生を貫いて、偉大な業績を残してくれた女性科学者たちの生きざまを、子どもたちにも分かりやすく伝えてくれる絵本です。ともすれば「女性は科学者に(理系に)向いていない」という偏見にさらされ、表向きは男女平等を唱えながら実際には陰湿な差別構造が温存されていることが多い科学者コミュニティのなかで日々闘っている女性科学者、女性科学者に憧れる学生や子ども、そしてもちろん研究評価や予算配分を決定する立場にいる偉い人(その大半が男性)に、ぜひ読んでほしい一冊です。



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