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『モイラの「転生」』(笙野頼子) [読書(随筆)]

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モイラ!そのままの小柄さと目鼻立ちで(ただ四肢だけは長い)。「前世」好きだった出窓にすぐに上がり、「おとなしいです」と言われていたはずが、盛大に凄む。モイラの死んだ年の生まれである。雄と間違えられていた可憐な雌、こんな再会があるのだろうか。心の中でふと神仏を思った。ただ、「前世」そっくりの凄みは一日で消え、翌日から膝に来る。
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月刊ねこ新聞 2018年1月12日号より


 シリーズ“笙野頼子を読む!”第116回。

 月刊ねこ新聞(猫新聞社)2018年1月12日号(No.215)に掲載されたエッセイです。


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十月の末、さる方のお世話で、飼主様急死の老猫を迎える、命名ピジョン。
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「群像」2018年1月号p.167


 群像に掲載された『九月の白い薔薇 ――ヘイトカウンター』のラストに書かれていた、新しい猫との出会いが、より詳しく書かれています。「最後の希望」ギドウとの別れにより「心を焼かれ立てなくなった」著者のもとに、生まれ変わりかと思うほどモイラそっくりの猫が。

 ちなみに、モイラとの別れについては、短編『モイラの事』『この街に、妻がいる』(短篇集『猫道 単身転々小説集』に収録)に書かれています。先にそちらを読んでからこのエッセイを読むと、これがもう、泣けて泣けて。


  2017年03月16日の日記
  『猫道 単身転々小説集』
  http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2017-03-16


 なお、モイラやギドウとの出会いについては、長篇『愛別外猫雑記』に詳しく書かれています。

 そして「モイラの後継を無事に看取りたい」という、ささやかで切実な、希望や祈りすら、いちいちいちいち踏みつぶしにくる大きなもの。


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――どうか戦争よ来てくれるな、と私は祈る。また薬価を高騰させ病人を喰い殺すTPP、FTA、RCEP、流れてよ、と。モイラの後継を無事に看取りたい。平和の下でなければかなわぬ望みである。
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月刊ねこ新聞 2018年1月12日号より


 老猫と難病患者が静かに幸福に生きる。ただそれだけのことすら許さないこの国って、いったい何なのかと思う。



タグ:笙野頼子
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