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『SFマガジン2018年2月号 オールタイム・ベストSF映画総解説 PART3』 [読書(SF)]

 隔月刊SFマガジン2018年2月号の特集は、「オールタイム・ベストSF映画総解説 PART3」、「「ガールズ&パンツァー」と戦車SF」、「アーサー・C・クラーク生誕100年記念特集」、の三本立てでした。また、澤村伊智さんの読み切り短篇が掲載されました。


『サイバータンク vs メガジラス』(ティモシー・J・ゴーン、酒井昭伸:翻訳)
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「銀河系の既知の星域に、ほかにどれだけ、核反応エネルギーで動く巨大トカゲが棲息していると思うんだ? ものごとというものは、本質を見なくてはいかんな」
〔わかったよ。助言を容れよう。指定目標の新名称は“メガジラス”でいく〕
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SFマガジン2018年2月号p.104

 人類が創り出した銀河最強の戦闘機械、サイバータンク。その前に立ちはだかったのは、咆哮と共にプラズマブレスを吐く巨大トカゲ型放射能怪獣「メガジラス」だった。両雄激突のさなか、上空から現れたのは宇宙最凶のエイリアン。巨大メカ、巨大怪獣、巨大エイリアン、三つ巴の死闘の行方は。って、男の子ってこういうのが好きなんでしょ。


『からっぽの贈りもの』(スティーヴ・ベンスン、中村融:翻訳)
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 ティモシーの喉がやり場のない怒りで小刻みに震えた。彼は叫びたかった。「いいや、サンタクロースはいない、クリスマス・イヴはない。プレゼントはない……あるのは痛みとゆっくりした死だけ、寒さと空腹だけなんだ」と。彼は目をぎゅっと閉じて、両膝をついた。涙が頬を流れおち、アンジーが困惑して眉間にしわを寄せた。
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SFマガジン2018年2月号p.113

 核戦争を生き延びた子どもたち。だが大人は死に絶え、食料も燃料も乏しく、このままでは冬を越せないことは明らかだった。しかし、絶望のなかで、誰かが言い出す。もうすぐクリスマスだからきっとサンタさんが助けに来てくれると。それが本当ならどんなにいいだろう。だがもう12歳のティモシーは知っていた。サンタクロースはいないのだ。

 核戦争後の世界、ロボット戦車、心温まるクリスマス・ストーリー、という無理やりな三題噺をうまくまとめた短篇。


『タイムをお願いします、紳士諸君』(アーサー・C・クラーク&スティーヴン・バクスター、中村融:翻訳)
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「きみはその線で話をでっちあげなかったっけ、チャールズ? 美術品泥棒が時間を遅くするって話を? 題名は――『愛に時間を』だったっけ?」
「そいつはハインラインだ」とデイヴィッド・カイル。
「『時は乱れて』?」
「ディックだ!」とデイヴィッドが叫んだ。
「元はシェイクスピアだ!」とジョン・クリストファー。
「H・G・ウエルズの短篇」とハリーがもったいをつけていった。
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SFマガジン2018年2月号p.241

 半世紀ぶりに白鹿亭に集まったぼくたち。もう百歳に近いハリーが、あの頃のように語り始める。かつて原子炉で事故が起きて反重力バリアが発生した話をしたが(もちろん読者も覚えている)、今度は核融合炉で事故がおきて時間加速フィールドが発生した話だ。

 バクスターによる『白鹿亭綺譚』(クラーク)の続篇。老齢SFファンたちの同窓会と化したSFコンベンション、みたいなノリになっています。


『マリッジ・サバイバー』(澤村伊智)
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 慣れるしかないらしい。タブレットの使い方を覚え、皆が登録しているSNSに自分も登録し、ネットの話題を必死で追った中学生の頃のように、俺はまた頑張らなければならない。だが可能だろうか。四十を間近に控えた今になって、そこまで順応できるだろうか。
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SFマガジン2018年2月号p.209

 指輪型ウェアブルデバイスにより、夫婦で互いの居場所や体調を常に確認しあう。それは今どき当たり前の習慣となっていた。だが語り手は、妻から常に監視されていることに強いストレスを覚える。時代から取り残されている自分がおかしいのか、それともこの24時間監視社会が狂っているのか。

 SFマガジン2017年6月号掲載の『コンピューターお義母さん』、SFマガジン2017年10月号掲載の『翼の折れた金魚』と同じく、技術の進展により社会問題が露骨に可視化されてゆく不安を描いた作品。


タグ:SFマガジン
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