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『SFマガジン2017年8月号 スペースオペラ&ミリタリーSF特集』 [読書(SF)]

 隔月刊SFマガジン2017年8月号の特集は「スペースオペラ&ミリタリーSF」でした。また、早瀬耕さんと谷甲州さんの連作シリーズ最新作、さらにラファティの短篇が掲載されました。


『プラネタリウムの外側』(早瀬耕)
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コンピュータがどんなに進化しても、死者と死の瞬間の経験を語り合うことはできないだろう。
 それを頭で理解していても、私が知りたいのは、そのときの彼の気持ちだ。(中略)
そして、私が作らなくてはならないBOTは、「死」の直前を知るためのシミュレーションだった。
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SFマガジン2017年8月号p.69、74

 今は亡き恋人は、死の直前に何を考えたのか。それを確かめるべく、有機素子コンピュータ上でシミュレートされた恋人との会話を繰り返す語り手。だが次第に有機素子板の中と外の区別が曖昧になってゆき……。

 SFマガジン2016年2月号に掲載された『有機素子板の中』、SFマガジン2016年6月号に掲載された『月の合わせ鏡』、に続く連作シリーズ第三弾。『有機素子板の中』と同じく、出会い系チャットサービスのインフラ(会話BOT)を使って意識というものの在り方を探ります。


『亡霊艦隊』(谷甲州)
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 一時は再建不可能とまで報じられていた航空宇宙軍内宇宙艦隊は、急速修理によって続々と戦列に復帰する動きをみせていた。おそらく一ヶ月もしないうちに、航空宇宙軍は戦力を回復するだろう。(中略)外惑星連合側も、手をこまねいていたわけではない。航空宇宙軍の艦隊再建が完結しないうちに、拙速で作戦を開始していた。
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SFマガジン2017年8月号p.220

 第2次外惑星動乱。開戦劈頭の奇襲攻撃により大きな戦果をあげた外惑星連合軍。だが、航空宇宙軍は急速に戦力を回復させつつあった。慢性的な人員不足に苦しむ外惑星連合軍は、一気に趨勢を決めるべく保有する全戦闘艦艇を投入した作戦を開始する。新・航空宇宙軍史シリーズ最新作。


『《偉大な日》明ける』(R・A・ラファティ、伊藤典夫:翻訳)
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 メルキゼデク・ダフィー、書店主、美術商、質店主、そして時には街の名士は、心を決めかねて立ち尽くした。きょうが《偉大な日》なのか彼には確信がなく、仮にそうだとしても、自分が気に入っているかどうか確信はないのだった。
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SFマガジン2017年8月号p.318

 ついにやってきた《偉大な日》。信仰さえあれば実質など不要。コーヒーだってカップなしに飲めるのだ。すべての人々はひとつに溶け合い、内面化する。すばらしい…夢のようだ…新しい世界が来る…ユートピアが…。あー、それって自分が書いた風刺コラムの皮肉だったのに、本当に《偉大な日》が明けちゃうなんて、どうすりゃいいんだ。問答無用のラファティ。


タグ:SFマガジン
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