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『ペトルーシュカ』(勅使川原三郎、佐東利穂子) [ダンス]

 2017年05月12日は、夫婦でKARAS APPARATUSに行って勅使川原三郎さんと佐東利穂子さんによる新作公演を鑑賞しました。上演時間60分の作品です。

 最初から最後までとにかく勅使川原三郎さんの人形振りがすさまじく、表情も含めて鬼気せまるものがありました。びびった。

 薄暗い照明の下、影となってたたずむ人形の姿はホラーというか怪談。糸で釣られて操られている人形のぎこちない動きが始まります。やがて本当に糸で釣られているように手足がふらふらと頼りなく動き、ポーズ固定のまま全身が床をすすーっと滑ってゆく(ようにしか見えない)様子に驚かされます。背筋が凍ります。

 しかし、人形に心が宿ってくるにつれて、動きが次第に自発的なものになってゆくのがありありと。同時に、心があることでとてつもない苦悩が生まれてくる。苦しい、苦しい。その苦悶と絶望の表現が凄絶で、思わず息を飲みます。壁に身体を打ちつけたり、床を踏みならしたりするシーンでは、どんっ、という音と振動に、こちらも心臓ばくばく。

 さらに表情による演技が際立っていて、たくみな照明とあいまって、苦悶、絶望、悲哀、ときに邪悪な表情を見せてくれます。

 そもそも照明はいつも凄いのですが、今作では特に細かく素早く照明が変化し、舞台の印象も刻一刻と変わってゆきます。衣装の色も様々に変化し、ときどき血に染まったように見えて戦慄を覚えたり。

 自らの心を持てあまし、のたうちまわるようなペトルーシュカの葛藤とは対照的に、佐東利穂子さんが踊るバレリーナ人形はクールで冷淡。心がなく、ただ綺麗に踊っているだけ、に見えます。まだ他人に対する同情心が芽生えていない幼い女の子に見える、というのが凄い。

 希望と絶望、苦悩と諦念をいったりきたりしながら苦しみ続けるペトルーシュカの姿に胸がつぶれるような感情に襲われます。これは私の苦しみ、これは私の悲しみ、と誰もが共感するのではないでしょうか。


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