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『へんな星たち 天体物理学が挑んだ10の恒星』(鳴沢真也) [読書(サイエンス)]


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 ブルーバックス・シリーズを手にされるような方は「宇宙」といえば、ダークマター、ブラックホール、ビッグバン、マルチバースといった、いかにも最先端をいくような話題を好まれるのかもしれません。恒星というと、夜空のどの星を見ても、明るさに違いはあってもどれも点。配列が変わるわけでもなく、どうにも地味――そんな感じを持たれているかもしれません。
「恒星なんてつまらない」
 でも、そう思われている方にこそ、本書を読んでいただきたいのです。
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新書版p.14


 ダークだブラックだと騒いでいるようではまだまだ子供、違いの分かる大人の話題はずばり「恒星」! 異星文明の仕業かと騒がれた恒星、10光年もの尾を生やした恒星、表面の半分以上が黒点に覆われている恒星、そして規格外の超巨大恒星。天文学者が厳選した個性派恒星を紹介する「へんな星」カタログ。新書版(講談社)出版は2016年6月、Kindle版配信は2016年6月です。


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 この本は恒星の中でも、とくに変わったものたちに登場してもらいます。SF映画にも出てこない二つの円盤を持ち、しかも一つが反り返ってしまった星! 大気の組成がかなり異常!? 地球外知的生命のしわざか!? といわれた星! なんとなんと恒星のくせに10光年もの長いしっぽを生やした星! おまえは彗星か!? 墨を吐き出して姿をくらます、まるでタコな星! どんどん膨らんで一時は天王星(いや、ひょっとすると海王星)の軌道ほどにも大きくなったバケモノ星! 爆発したら人類が絶滅するかもしれない星? などなど、奇想天外な恒星たちのオンパレード。おおげさにいえば、星の数ほどもある恒星のなかから私が厳選した、10個の超・超変わり者の星たちです。
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新書版p.15


 というわけで、他に類を見ない特徴を持った個性派恒星を10個紹介してくれる本です。解説を読み進むにつれて、天体物理学の基礎を知ることが出来るように工夫されている好著、なのですが。

 前述の引用文を読んで頂くだけでも分かる通り、昭和のおじさんが若者にウケようとして無理やりテンション上げてはしゃいでいるような痛々しさが感じられる文章が、ちょっと……。目次を見るとその印象はますます強まってゆきます。


[目次]

「第1章 プレオネ イナバウアーする二重円盤」
「第2章 プシビルスキ星 宇宙人が核兵器を捨てたのか?」
「第3章 ミラ サプライズだらけの彗星もどき」
「第4章 かんむり座R星 初心者におすすめの宇宙ダコ」
「第5章 いっかくじゅう座V838星 すべてが規格外の美しき怪物」
「第6章 りゅうこつ座イータ星 「天の川No.1」を誇ったあの星はいま」
「第7章 WR104 本当は危険な宇宙の蚊取り線香」
「第8章 おうし座V773星 世界が追いかけた恋人たちの熱いキス」
「第9章 ケフェウス座VW星 ひょうたんは究極の愛のかたち」
「第10章 ぎょしゃ座イプシロン星 世界中で大激論!幽霊の正体を明かせ!」


「第2章 プシビルスキ星 宇宙人が核兵器を捨てたのか?」
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 その後の研究で、プシビルスキ星のくわしい化学組成がわかってきました。鉄は太陽に存在する量の1割しかないのに、希土類は何千倍、何万倍もあるのです。とくにホルミウムという元素は、地球以外ではこの星で初めて見いだされ、なんと太陽の10万倍もあります。(中略)この異常な化学組成、いったいどう説明したらいいのでしょうか?
 ここで出てきたのが、「地球外文明によるしわざではないか?」というたぐいの話です。
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新書版p.56

 「異星文明が核廃棄物を恒星に廃棄した結果ではないか」という論文が発表され話題になった、あまりにも異常な化学組成の星。その謎解きに挑む天文学者たちの挑戦が紹介されます。


「第3章 ミラ サプライズだらけの彗星もどき」
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NASAの紫外線衛星GALEXが撮影したミラの姿です。そこには、なんとミラから長いしっぽが出ている様子が写っていたのです。まるで彗星ではないですか。超ド級衝撃。驚嘆。ミラ! ミラ!
 しかし彗星は直径数Kmほどの氷のかたまりなので、ミラとは大きさも物理的な性質もまったく違います。なのに、撮影されたその姿は彗星にそっくりなのです。尾の長さは、約10光年にもなると書かれています。
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新書版p.87

 最初に発見された脈動変光星、伴星のガス降着円盤、そして10光年ものびている尾。恒星ミラの謎と驚異に迫ります。


「第5章 いっかくじゅう座V838星 すべてが規格外の美しき怪物」
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V838の表面温度はついに2000度を下回り、核融合をしているものとしては、これまで観測されたなかで最も低温の星の一つになりました。
 11月には、なんとそのサイズが6000太陽半径(約28天文単位)にもなったと考えている研究者もいます。これは太陽基準表面でいえば、な、な、なんと、海王星の軌道半径に相当します! バケモノ的大きさ、悪魔的巨大さです。まじかよ? と言いたくなります。
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新書版p.122

 最大で太陽の100万倍という光を放った謎の爆発を起こして赤色超巨星となった星、通称「赤い新星」。この謎だけをテーマとした研究会が4日間も開催され、諸説入り乱れていまだ解決されていないという、V838をめぐる熱い論争を紹介します。


「第9章 ケフェウス座VW星 ひょうたんは究極の愛のかたち」
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 だってこの星、主星も伴星も、黒点だらけじゃないですか! とくに主星のほうは、黒点で覆い尽くされています。星の表面全体に対して黒点が占める割合は、なんと、なんと、なんと! 伴星で55パーセント、主星はじつに66パーセントにもなるのです!
 こういったものを、本当に黒「点」といえるのでしょうか? これは黒点というより「黒い大陸」です。
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新書版p.216

 二重連星が互いに膨張することでくっついてしまった接触連星系。それがさらに膨張を続け、ついに誕生した「ひょっこりひょうたん星」(著者命名)、「かなり関係が進んだカップル」(著者形容)。巨大黒点に覆われた過剰接触連星系、その形状が判明するまでの観測と議論の歴史を紹介します。



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