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『猫を助ける仕事 保護猫カフェ、猫付きシェアハウス』(山本葉子、松村徹) [読書(教養)]


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「すい臓がん、余命数ヶ月。猫のために建てた家と、この子たちと、財産を全部渡したい。外の猫たちも可能な限り助けてやってくれ」
(中略)
 自分の命が尽きるぎりぎりまで一緒にいたいわが子同様の犬猫たち。でも、ぎりぎりまでその子たちの行く先を決めないでいるわけにはいかない。気丈な方ほど引き裂かれる想いを味わいながら、早めに次の飼い主さん探しを開始します。梅田誠さんは、これをビジネスの手法で解決しろといわれました。
 猫だけでなく犬の保護や里親探しも次々とお話をいただきます。足りないピースとそれを欲する人たちをつなぐシステムをひとつずつ作っていきます。そして早く次の世代に渡していきたい。私が明日いなくなっても大丈夫なように。
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Kindle版No.1815、1825


 年間10万頭が殺処分され、それをはるかに上回る頭数が路上で死んでゆく。彼らを助けるために必要なのは、持続可能なシステム、ビジネスの手法で保護する仕組み。猫の殺処分ゼロを目標にソーシャルビジネスを展開する「東京キャットガーディアン」の取り組みを紹介する一冊。新書版(光文社)出版は2015年11月、Kindle版配信は2015年12月です。


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環境省「犬・猫の引取り及び負傷動物の収容状況」によると、2013年度に全国で殺処分された犬は約3万頭、猫は約10万頭にのぼります。
 行政の保護施設に引き取られた犬・猫が元の飼い主に返還、もしくは新しい飼い主に譲渡された割合は犬が53パーセント、猫が14パーセントです。つまり、猫は犬に比べて返還・譲渡される割合が非常に低く、殺処分される割合が非常に高いということです。
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Kindle版No.582


 飼い主に捨てられた猫。路上で生まれた猫。彼らの置かれている悲惨な境遇と運命を知れば知るほど、何とかして保護してやりたい、里親を見つけてやりたい、と思うのが人情です。しかし、どんなに愛情を注いでも、情熱を燃やしても、個人や小グループがボランティアで出来ることは限られます。助けても、助けても、きりがない。心を削られ、疲労と絶望に打ちひしがれ、幾度も涙をのみ、見て見ぬふりをしながら、心の中の何かを殺してゆく。それが猫の保護活動……。

 そんな猫の保護活動を「個人の頑張り」に任せるのではなく、ソーシャルビジネスとして持続的に続け、拡大してゆきたい。東京キャットガーディアンの理念と挑戦を、当事者が語ってくれます。


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 東京キャットガーディアンの活動は、行政の理解と協力、地域のボランティアさん、多くの支援者の方々や企業の善意とご協力で成り立っています。とはいえ、都内にある3ヶ所のシェルターで常時300頭近い保護猫を世話しつつ、年間約700頭の譲渡を実現しているのは、保護と譲渡の仕組み、支援金と支援物資を受け入れる仕組みを標準化してマニュアル整備を進める一方、年間数千万円規模になる事業収支をバランスさせながら活動できる運営体制を築き上げてきたからです。
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Kindle版No.30


 ビジネスの手法で猫を保護する。その最初の取り組みは、猫カフェ型の開放型キャットシェルターでした。


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 行政による猫の殺処分をゼロにするためには、日本におけるペット流通の仕組みの中で有効な対策を考える必要があります。東京キャットガーディアンは「足りないのは愛情ではなくシステム」と考え、家族の一員として迎える猫を、ペットショップやブリーダー(繁殖者)から購入する以外に、民間の保護団体から譲り受ける新しい流通ルートを社会に定着させようとしています。そのために、日本で初めて猫カフェ型の開放型シェルターの運営に乗り出したのです。
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Kindle版No.15


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猫カフェスペースのある開放型シェルターを日本で初めて作った東京キャットガーディアンには、何度も海外メディアからの取材がありました。おそらく、日本だけでなく世界でも初めての施設なのでしょう。ただ、彼らが大変興味深げに取材を終えたあと、決まって「これだけ猫を可愛がる国民が、どうして年間十万頭も猫を殺処分しているのか」と聞いてくるのには閉口しました
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Kindle版No.606


 猫を飼いたいと思った人が、ペットショップではなく、まずは気軽に猫カフェに行って保護された猫たちと触れあう。気に入った猫がいれば、引き取って育てる。相談や教育など様々なサービスも受けられる。それが猫カフェ併設キャットシェルターという事業です。

 猫カフェに出向くのではなく、保護された猫がいる場所に住む。いわば一匹キャットシェルターの管理者になる。それが「猫付きマンション」という不動産ビジネスです。


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 2010年9月に東京キャットガーディアンが始めた「猫付きマンション」は、猫との生活を夢見る住人(入居者)と賃貸マンション経営を安定させると同時に猫の助けにもなりたい大家さん(オーナー)、それに成猫の保護場所を作ってたくさんの猫を救いたい保護団体と保護猫の四者みんなが幸せになれるシステムです。
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Kindle版No.1271


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 現在、「猫付きマンション」は東京都内を中心に80物件が稼働しています。つまり、東京キャットガーディアンの外部シェルターとして、80頭の飼育場所が確保されたことになります。
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Kindle版No.1316


 一歩進んで、複数の保護猫と、複数の人間が、住居をシェアする。キャットシェルターを住居とし、共同管理する。「猫付きシェアハウス」です。


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「猫付きシェアハウス」は、リビングルームやダイニングルームなどの共用部で複数の猫を飼育しますが、各個室のドアには専用のくぐり戸があって猫が自由に出入りできる構造になっています。あらかじめ、キャットウォークやキャットステップを設置した物件もあります。
 住人が飼育主体として責任を持って猫を飼育する点は「猫付きマンション」と同じですが、当番表に基づいて交代で飼育する点が異なります
(中略)
 餌代やトイレ砂などの消耗品費はシェアハウスの管理費に含まれており、物品は東京キャットガーディアンが提供する点も「猫付きマンション」と異なります。これは、何よりも餌の銘柄を統一し、猫にとって最適のフードを提供する、という現実的な理由からです。なお、猫用のトイレは共用設備としてあらかじめ用意されています。
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Kindle版No.1334、1342


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「猫付きマンション」と「猫付きシェアハウス」は日本初のアイデアとして、2015年4月に両者の商標権の設定登録を行いました。海外の先例もないようなので、猫カフェ型の開放シェルター(保護猫カフェ)同様に世界初の試みともいえそうです。
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Kindle版No.1376


 さらには、猫付き老人ホーム、財産委託型キャットシェルター、など様々な猫保護ソーシャルビジネスの可能性があります。猫保護活動のソーシャルビジネス化に関心のある方、「東京キャットガーディアン」のサービスを利用したいという方、「猫付き不動産」の運営に興味がある方、そして賃貸住宅で短期間でも猫を飼ってみたいと思う方に、読んでほしい一冊です。


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