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『春の祭典』『アンリ・ミショーのムーヴマン』(カンパニー・マリー・シュイナール) [ダンス]

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人々はその饗宴のために3万年前から、思いつく限りの装身具、歌、神仏、舞踊をあみ出してきました。親愛なる皆さん、私もそのひとりです。饗宴のために絶えず喜びをもって創りつづけています。けれど奇妙なことに、バリエーションが静寂から生まれるのをただ単に見届けるときにも私はおなじ喜びを見出すのです。
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マリー・シュイナール


 2015年10月25日は、夫婦と知人の三名でKAAT神奈川芸術劇場に行って、カンパニー・マリー・シュイナールの二本立て公演を鑑賞しました。10名のダンサーによって踊られる上演時間35分の作品が二つ、途中休憩20分を合わせて、全体で90分の公演です。

 『春の祭典』はマリー・シュイナールの代表作の一つ。何も置かれてないシンプルな暗い舞台上、スポットライトが当てられたダンサーがひとしきり奇天烈なダンスを踊っては去ってゆく、そして次のダンサーにスポットライトが当てられる、その繰り返し、という、驚くほどシンプルな構成です。

 かなり変な動きが多い、というか、尋常な動きの方が少ないくらい。ニジンスキー牧神ごっこで足をかくかくかくかく、身体中に長いトゲを装着してウミウシゆらゆらゆらゆら、そのトゲを自分の額と股間から生やして腰をへこへこへこへこ、長いトゲを指につけて開いたり閉じたりしながら横歩きカニごっこかにかにかにかに、鳥が首を前後にふる動作をひょこひょこひょこひょこ、ジャンプしては空中平泳ぎをりぴーとりぴーと、とまあ、そんな、人外の動きだらけです。

 何だか、とてつもなくふざけた、滑稽なことを、大真面目にやっている気がします。最初は戸惑うのですが、何しろ30分以上も見続けているとだんだんハイになって、あれ真似して踊ってみたい、などと感じるようになっていきます。ダンスの衝動。頭と股間に角を生やして前方突き出した腰をひょこひょこ動かして、はるサイ。

 『アンリ・ミショーのムーヴマン』は、フランスの詩人・画家であるアンリ・ミショーの詩画集『ムーヴマン』をモチーフにした作品。舞台背景のスクリーンに『ムーヴマン』に掲載されている絵(抽象化された人間のポーズと動きらしいのですが、筆で描いた「書」にも見えます)が投影され、ダンサーがひとりひとり舞台上に歩み出ては、その「絵」を身体で表現します。

 というかこれ、日本のコンテンポラリーダンスカンパニー「コンドルズ」の演出で、スクリーンに投影された影絵を手前のダンサーが無理やり真似して観客を笑わせるという、あれを30分やり続けるようなもの。

 『ムーヴマン』の詩(テキスト)については、床に敷いてあるシートをめくってその下に潜り込みながら、マイクを握って朗読(というか絶叫)するという。最後はストロボ効果をばりばりに使って、「静止画で表現された動き」の再現に挑みます。

 ロールシャッハテストにも似ている「ムーヴマン」(動き)を実際に身体で動いて表現してみる。ひねりも何もなく、解釈するとかコンセプトを読み解くとか小賢しいことを考えず、ひたすら形と動きを無理やりにでも真似してみる。「絵」をモチーフにしたダンス作品数多いなかで、これほどストレートな振付は珍しいのではないでしょうか。

 これも最初はアホらしさに戸惑うのですが、次第にそのひたむきさというか、やりたいからやってみた、もっとやりたいからもっとやってみた、というダンスの根源のようなものを見せつける舞台に、ある種の感動を覚えるようになってきます。考えるな、感じろ。そして動け。


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