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『SFマガジン2014年10月号 特集:いまこそ、PKD。』 [読書(SF)]

 SFマガジン2014年10月号はフィリップ・K・ディック特集ということで、短篇を新訳で掲載してくれました。また、新・航空宇宙軍史の第4話、武佐音研シリーズの第3話が、それぞれ掲載されました。

『地図にない町』(フィリップ・K・ディック)

 「忘れられた町が存在しはじめた----七年の時を経て。町といっしょに、未確定だった現実のひと切れも甦った。いったいどうして? 過去のなにかが変わったのか? 過去の時空連続体に変更が加えられたのか?」(SFマガジン2014年10月号p.23)

 存在しない駅に向かう乗客。その謎を探る男は、地図にないその町についにたどり着く。この展開なら心温まるファンタジーになったっておかしくないのに、町の存在が確定したため現実が波紋のように改変されてゆき、男の過去も仕事も恋人も、そして記憶も、すべてが消え去り置き換えられてゆく、という現実崩壊感。それがディック。1953年発表、1975年初訳の著名短篇の新訳版です。

『ジュピター・サーカス』(谷甲州)

 「存在自体が非合法な未登録船が、木星表面を減速領域とする軌道を接近中であるという。事実だとすれば、看過できない事態だった」(SFマガジン2014年10月号p.147)

 木星大気上層で謎の宇宙船を追跡していた篠崎中尉が見たものは、宇宙における軍事バランスを覆し得る新テクノロジーの存在を示していた。第1次外惑星動乱終結後を舞台とする新・航空宇宙軍史、その第4話。

『サイレンの呪文』(オキシタケヒコ)

 「人を、あのカマキリと同じ意志なき人形へと変えてしまう力。水辺へと誘い、溺れさせる、圧倒的な支配力。僕の奥底に淀む暗がりに居座り続ける怪物が、求めていたものはそれだった」(SFマガジン2014年10月号p.256)

 武佐音研の所長とチーフエンジニア、かつて高校生だった二人が手にいれた奇妙な音楽ファイル。それは聞く者の脳を操る恐ろしい力を持っていた。

 武佐音響研究所の三名が音にまつわる難題をばばんと解決する音響工学SFミステリのシリーズ第3話。今回は所長の佐敷裕一郎が語り手となり、過去の出来事を回想します。障害者ゆえの屈託した心理、サイレンの力に魅入られてゆく自分、そして現在チーフエンジニアとして働いている武藤富士伸との友情。ちなみに、紅一点である蕪島カリンもラストにちょこっと顔を出します。これからも頑張ってほしい。


タグ:SFマガジン
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