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『おどる12人のおひめさま グリム童話』(エロール・ル・カイン:絵、矢川澄子:翻訳) [読書(小説・詩)]

 「こんどは、金の森にさしかかりました。そのつぎは、ダイヤモンドの森でした。兵士はそのたびに、一枝ずつ折りとっては、ぼきっというおとをひびかせました。末のおひめさまは、そのたびに、いぶかしげな声をあげました」

 ある国の12人のお姫様は、朝になるとみんな靴がぼろぼろになっている。どうやら彼女たちは夜中に寝室を抜け出してどこかで踊っているらしいが、王様がいくら問い詰めても誰も答えない。グリム童話を元にした滑稽で美しく幻想的な絵本。単行本(ほるぷ出版)出版は1980年2月です。

 12人のお姫様は、毎晩どこを出歩いているのか。その謎を解いた者に好きな姫と結婚させ国を継がせるよう、と言い出した王様。多くの国の王子がやって来てはわれこそはと挑戦するものの、誰もがお姫様たちに出し抜かれてばかり。

 ところがあるとき、たまたま透明マントを手に入れた貧しい兵士が、それを使ってこっそり彼女たちの後を付けてゆきます。真夜中に寝室を抜け出したお姫様たちは、いったいどこに行くのでしょうか。

 グリム童話のなかでも単純なお話ですが、エロール・ル・カインの絵が素晴らしい。欧州の古い宗教画を連想させる筆致で、幻想的な光景が繰り広げられます。

 滑稽なトーンを残しつつ、不気味な雰囲気を出すところが個人的にツボです。例えば、お姫様たちが地下へ向かう階段を降りて行くシーンは不安感をそそりますし、行きは豪華絢爛だった金や銀の森が、帰りは不気味な影絵になっていたり。紫色を多用した真夜中の仮面舞踏会のシーンもちょっと怖い。

 そして、何と言っても記憶に残るのは、「しあわせにくらしました」というお決まりのフレーズで完結した、その次のページに登場する最後の絵でしょう。思わず笑ってしまう内容になっています。

 外国のお姫様のひらひらドレスが好き、という子はきっと喜ぶ名作絵本です。


タグ:絵本
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