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『火の鳥』『ヌアージュ』『ボレロ』(イリ・キリアン、ベジャール、パリ・オペラ座) [ダンス]

 2013年12月09日のNHK-BS 「プレミアムシアター」では、2008年12月にパリ・オペラ座バスチーユで行われた『ベジャール&キリアン プログラム』の舞台映像を放映してくれました。

 まずは、モーリス・ベジャール振付『火の鳥』。

 古典バレエ『火の鳥』を大胆にアレンジして、第二次大戦中のパリを舞台としたパルチザン兵士たちの物語にした作品です。意気消沈したゲリラ兵たちの前に真紅のヒーローが現れ、彼らを鳥ダンスで鼓舞。志気は上がるものの、自身は倒されてしまう。しかし、民衆の不屈の精神によって文字通り不死鳥のごとく蘇り・・・。

 というか、コスチュームのせいもあって、ウルトラマンにしか見えないのは私だけでしょうか。怪獣に蹂躙される人々の前にウルトラマン(バンジャマン・ペッシュ)が現れ大活躍。しかし、ついにゼットンによって倒されてしまう。もはや地球の命運もここまでか。そこでやってきたゾフィー(カール・パケット)によって新たな命を授けられ、ウルトラマン大復活。さらに舞台奥からは同じコスチュームを着たウルトラ兄弟たちが続々と現れ、みんなで勝利の踊りを・・・。

 ベジャール作品が持っているいわゆる祝祭的な側面が強く出た作品で、バンジャマン・ペッシュの鳥の動きを模したダンスはきびきびしていてかっこいい。両手を翼のように構えるポーズがびしっと決まったりすると、駆け抜けるような爽快感があります。祝祭的というより、ヒーローショーのノリで、観ていて気持ちいい舞台でした。

 二本目は、イリ・キリアン振付『ヌアージュ』。

 キリアンの初期作品で、完全な抽象ダンス。ドロテ・ジルベールとマニュエル・ルグリが見事に踊ってみせます。全体に漂う荘厳さと緊張感のなかで、息をのむようなリフトが次々と登場し、美しい動きに心がしびれます。キリアン作品はどれも素晴らしい。

 ルグリのサポートが、これまた実に見事。というか、2008年末、現役最後の頃のルグリが見られるという点でも、これ貴重な映像かも。

 最後は、モーリス・ベジャール振付『ボレロ』。

 ベジャールの代表作の一つ。有名な『ボレロ』の繰り返す旋律に乗せて、メロディ(ニコラ・ル・リッシュ)が気迫のこもったダンスを踊り、終幕に向けて盛り上がってゆきます。

 呪術儀式か降霊術かと思うほどシャーマニズム的に踊ったジョルジュ・ドン、格闘技か武術演舞かと思うほど力強くみせびらかし風に踊ったシルヴィ・ギエムなど、有名どころのメロディと比べて、意外にもスポーティで爽やかに踊ってみせるル・リッシュ。

 ル・リッシュなんで、もっとこう、情念こもった、あるいは強迫神経的な、ちょっとやばいなー的なボレロになるか。変な期待をしていたのですが、軽やかに、むしろ楽しげに踊るル・リッシュが意外で、ちょっと好青年に見えたり。


パリ・オペラ座バレエ
ベジャール&キリアン プログラム
『火の鳥』『ヌアージュ』『ボレロ』

2008年12月 パリ・オペラ座バスチーユ
2013年12月09日 NHK-BS 「プレミアムシアター」で放映。

[キャスト]

『火の鳥』
 振付: モーリス・ベジャール
 出演: バンジャマン・ペッシュ、カール・パケット、パリ・オペラ座バレエ団

『ヌアージュ』
 振付: イリ・キリアン
 出演: ドロテ・ジルベール、マニュエル・ルグリ

『ボレロ』
 振付: モーリス・ベジャール
 出演: ニコラ・ル・リッシュ、パリ・オペラ座バレエ団


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