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『猫楽園』(猫夫人) [読書(随筆)]

 「道ばたに腰掛けたら最後、四方八方から黒い影が現れ、あたたかい太ももをめがけ突進してくる。あまりの早わざに抵抗する間もなく、あっという間に太ももは二本とも猫ちゃんのもの。ひどいときは二匹も三匹も折り重なってくるんだから」(『猫村のいたずらっ子たち』 猴硐・牡丹村)

 ボランティア活動を組織化して、台湾・台北郊外の猴硐(ホウトン)を、野良猫と地元コミュニティが共存する観光地「猫村」に変えた写真家がいる。彼女の名は、猫村さん。じゃなかった、猫夫人。獣医である夫が「猫博士」と呼ばれているため、「猫博士夫人」を略して「猫夫人」なんだそうです。その猫夫人の第一写真集『台湾這裡有猫』が日本語に翻訳されました。単行本(イースト・プレス)出版は2013年06月です。

 台湾の書店に行くとたいてい猫本コーナーがあり、猫写真集や猫エッセイがずらりと並んでいます。猫写真集なら言葉が分からなくても楽しめるので、観光客が涼しい書店内で時間をつぶすときなど実に助かります。

 とはいえ、書かれている文章もやっぱり気になるわけで、日本語版が出たらいいのになあ、と思ったことも一度や二度ではありません。日本の猫写真集はいっぱい中国語に翻訳されて台湾で手に入るというのに。

 ですから、台湾の人気写真家、猫夫人の第一写真集がついに日本語に翻訳されたのは嬉しいかぎりです。猴硐をはじめとする台湾各地で撮影した猫たちの写真に自筆エッセイを添えた一冊です。撮影場所は観光地が多いので、台湾の観光地写真としても楽しめます。

 廟、路地、屋根、台湾のあちらこちらにいる猫のごく自然な姿を写し出した魅惑の写真集です。撮影場所に関する情報や、どんな状況で撮影したのか、様々なことが文章に書かれています。ご自身の飼猫「花ちゃん」に関するエッセイにも心惹かれます。

 個人的なお気に入り写真は、漁港でばんばん空を舞っている(餌に飛び掛かってゆく)猫、祠廟で静かにたたずむ貫祿猫、鹿港(ルーカン)の麺線作りの作業場で躍動する猫、など。空中を伸び伸びと跳んでいる猫、といった動きのある猫写真が印象的です。

 文章中に登場する台湾人たちも、いかにも猫好きらしいおおらかさで好感が持てます。

 猴硐の路地を歩いていたら、おじちゃんと猫。「うちの猫は二本足で立つんだ! 世界でこいつだけだ!」と自慢げに言うおじちゃん。次の路地にも別のおじちゃんと猫がいて、「この子はすごい。立つ猫なんだ。ほかの猫にはできない!」とおじちゃん断言。まったく猫好きはどこでも同じやなあと、しみじみ。

 「台湾南部の人ってホントにあったかくて、やさしいなって思う。(中略)実直で、くよくよしない姿はまさに台湾人の典型だ。自分のできることをしっかりがんばる。そして人を思いやる」(『素麵屋さんで猫歩き』 鹿港)

 というわけで、猫好き、台湾好き、どちらにもヒットするであろう素敵な猫写真集です。続く写真集も翻訳されてほしいと思います。


タグ:台湾
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