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『ファースト・ポジション 夢に向かって踊れ!』(ベス・カーグマン監督) [ダンス]

 世界最大級の若手向けバレエコンクール、ユース・アメリカ・グランプリ(YAGP)。毎年、プロを目指す世界中の若手バレエダンサーたち5000人以上が各地で開催される予選に挑み、数百名だけが最終選考に進むことが出来る。栄冠に輝くのは、わずか数名。

 このYAGPに挑む若いダンサーたちの姿を追ったドキュメンタリー映画です。ブルーレイディスクで鑑賞しました。

 デニス・ガニオ(パリ・オペラ座エトワールであるマチュー・ガニオの父親)に師事する天才少年、そのガールフレンドでイスラエル人の少女、アフリカ内戦で孤児となった黒人少女、故郷の家族を養うためにプロを目指すコロンビアの青年、日本人の教育ママに寵愛される姉弟、典型的な米国白人ブロンド美人。

 それぞれの若者の家庭事情、生活、将来の夢、バレエのレッスンなどを、カメラは丁寧に追ってゆきます。何不自由なく育てられた者、貧しさから脱出するためにバレエに賭ける者、容姿に恵まれた者、恵まれない者。抱えているものは異なりますが、誰もが情熱のありったけをバレエに注ぎ込み、決して譲れない夢のために最終選考の地、ニューヨークへとやってくるのです。

 上映開始から一時間、最終選考シーンに到達する頃には、観客も一人一人の若者に感情移入しており、誰が受賞するのか、誰がスカウトを受けてプロへの道を切り開くのか、固唾をのんで見守ることになります。ミュージカル『コーラスライン』みたいな。

 若者たちの家族、知人、さらにはバレエ学校やバレエ団の関係者へのインタビューも挟み込まれ、YAGPおよびバレエ業界の現状を姿を浮き彫りにしてゆきます。食事や衣装、さらには怪我といったバレエダンサーたちの舞台裏というべき興味深い映像も。

 題材はバレエですが、特にバレエに興味のない観客でも問題なく楽しめるスポーツドキュメンタリー映画で、その巧みに観客を引き込んでゆく手際は少々あざとさを感じるほど。教育熱心な東洋の母親、周囲の偏見と戦う黒人少女、チアリーダーをやっていたブロンド美人(あだ名は“バービーちゃん”)、といった具合に、選ばれた登場人物たちも定型的で分かりやすいイメージで撮られています。

 というわけで、バレエに関心がある方はもちろん、そうでない方もスポ根映画のノリで楽しめる娯楽作品。ローザンヌ国際バレエコンクールは、その最終選考の様子を毎年NHKが放映してくれるので馴染み深いのですが、YAGPはそういうことがないので、予選および最終選考の舞台映像(転倒などの失敗シーン、控室や廊下で撮影された映像含む)はそういう意味でも貴重だと思います。

 なお、特典映像として、YAGP最終選考における登場人物たちの演技(クラシック部門、コンテンポラリー部門とも)がノーカットで収録されており、さらに他の候補者たちの演技もダイジェストでたっぷりと収録されています。特典映像だけで一時間という豪華さ。人間ドラマより何より、とにかくバレエの舞台が観たい、これから話題になる若手注目株をおさえておきたい、という方も満足できるボリュームです。


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