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『おばけリンゴ』(作・絵:ヤーノシュ、翻訳:やがわすみこ) [読書(小説・詩)]

 「おうさまは たいへんしんぱいして、おおいそぎで ひみつけいさつを よびました。くろい ふくを きた、たくましい けいさつかんたちは、こわいものしらずの ゆうかんな ひとばかりでした」

 ポーランド生まれの作家・画家による巨大なリンゴをめぐる騒動を描いた絵本。単行本(福音館書店)出版は、1969年03月です。

 貧乏な男が願ったもの、それはリンゴでした。心からの祈りはかなえられ、持ち上げるのも大変なくらい巨大なリンゴが手に入ります。しかし、手に入ったら入ったで誰かにとられないか心配で眠れず、市場に担いで持っていっても皆に笑い物にされるばかり。やがて家に黒服の秘密警察がやってきて・・・。

 欲しかった物が手に入ったら、それはそれで苦労が絶えない。でもそれが失われてしまえば、また欲しくなってくる。人生にありがちなジレンマを、子どもたちに教えてくれる絵本です。

 まるで幼い子どもが慣れない絵筆を握って一所懸命に描いたように見せる微笑ましい絵柄。遠近法にこだわらず、画面いっぱいにのびのびと描かれたリンゴやドラゴンの絵は、いかにも親しみやすく、子どもたちは親近感を覚えることでしょう。

 巨大リンゴをめぐって喜んだり悲しんだりする物語は割とストレートで、ちゃんと最後はハッピーエンドになりますが、大人が読むとそれはそれでちょっと・・・。

 なんで兵士じゃなくて「秘密警察」が出てくるんだとか、その秘密警察に指令を出している国王はどうしてこんなに邪悪な顔をしているのかとか、秘密警察に殺されてしまうドラゴンがむしろ優しそうな顔つきなのはなぜかとか、そういや作者は第二次世界大戦前にポーランドで生まれてるんだよなあ、とか。

 というわけで、抱えきれないくらい大きな夢を抱いたり、他人とは違う自分だけの目標を立てたりすると、「くろい ふくを きた、たくましい ひみつけいさつ」がやってきますよ、人並みの幸福を願うだけにして目立たないように生きましょうね、という大切な教訓を幼い子どもたちに教えてくれる素敵な絵本です。


タグ:絵本
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