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『くまモンの秘密 地方公務員集団が起こしたサプライズ』(熊本県庁チームくまモン) [読書(教養)]

 「2012年1年間のくまモン商品の売上は、293億円を超えました。しかしこれはまだレポートが出ている分の半分ですから、実際はおよそその倍になると思います。その他にも莫大なPR効果があります。(中略)くまモンは1年間で1000億円くらいの価値を生んでいると思います。くまモンプロジェクトは何もないところから、ソフト事業として成功した、希有な地方の事業ではないかと思います」(新書版p.238)

 非常勤職員としてスタートしてからわずか1年で熊本県の営業部長に出世、ゆるキャラグランプリ2011にて栄えある一位を獲得した「くまモン」。キャラクタービジネスの知識も経験もない地方公務員チームは、いかにして彼をゆるキャラ界のスターに育て上げたのか。くまモンプロジェクトの内幕を当事者が詳細に語る一冊。新書版(幻冬舎)出版は、2013年03月です。

 くまモン誕生からおよそ1年間の出来事を書いた私家版『もしくま--もし、しがない地方公務員集団「くまモンとおもろい仲間たち」が小山薫堂氏の「もったいない主義」他を読んだら』を、加筆修正の上で第一部とし、別動部隊たる熊本チームの活動を紹介する第二部、さらに熊本知事が語る第三部を追加、これらを合わせて一冊としたものです。

 原本である『もしくま』に加筆したという第一部が本書全体の2/3を占めており、やはりここが最も面白い。くまモン神出鬼没大作戦、名刺ばらまき活動、ツイッターやブログの徹底活用、メディアミックス戦略、ロイヤルティー無料化とくまモン自身による企業への売り込み、そして知事を巻き込んで話題作りに成功した「くまモン失踪事件」など、くまモンを人気者にするため、じゃなかった熊本県をアピールするために、あの手この手の試みがずばずば当たってゆく快進撃。

 読んでいて妙におかしいのは、くまモンをあくまで実在する公務員として扱っているところ。「中の人」などいないことになっています。

 「当時は非常勤の公務員らしく、十分な「冬眠」時間を確保していましたが、営業部長となった今では、冬眠返上で働いています」(新書版p.39)

 「法律に詳しい読者の方からは「くまモン、電車に乗れるの?」とツッコミが入るかもしれません。ご指摘のとおり、先に述べたように、未だ「キャラ権」が確立されていない現在、公共交通機関にゆるキャラが乗車することは認められません。そのあたりの事情は、みなさま、どうかご理解のほどを」(新書版p.62)

 文章は異様にノリが良く、ときに悪ノリしたり脱線したり痛かったりもしますが、おかたいビジネス書にならないよう、ゆる本にしよう、という配慮が感じられます。

 とはいえ、ビジネス書としても興味深く読めます。

 「この章では、「とりあえず」が頻出しています。チームくまモンが、いかにも場当たり的に企画を進めているかのようですが、あくまでも当作品上の演出に過ぎないことを強調しておきます(苦笑)」(新書版p.137)

 とりあえず、見切り発車でもいいから、リスクを恐れず素早く動く。地方公務員らしからぬ(失礼)機敏かつ柔軟な対応で、くまモンを押し上げてゆくチーム。くまモンが成功すると共に、メンバーもまた成長してゆく。

 「くまモンと一緒に仕事をしてつくづく思ったけれど、行政だからこんなことをやっていいのか?と言って遠慮していてもいかん。県民や企業のみなさんのためになると思うなら「やるしこやってみる(やるだけやってみる)」のが大事かな」(新書版p.208)

 何か、かっこいい。

 というわけで、ドキュメンタリーとしても、ビジネス書としても、もちろんくまモン本としても、楽しめる一冊です。こんなチームで仕事をしてみたい、と感じると共に、地方公務員にだって(またもや失礼)こんなことが出来るのだから、うちの会社だって、という前向きな気になってきます。


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