『SFマガジン2013年5月号 《星界》シリーズ特集』 [読書(SF)]
SFマガジン2013年5月号は、9年ぶりの新作『星界の戦旗5 宿命の調べ』(森岡浩之)刊行を記念して「星界」シリーズを特集すると共に、長篇『巨獣めざめる』の刊行が予定されているジェイムズ・S・A・コーリイの短篇を翻訳掲載してくれました。
その『エンジン』(ジェイムズ・S・A・コーリイ)は、加速が止められなくなった宇宙船の暴走を扱ったハードSF短篇。
「速さは問題ではない。なにかにぶつからないかぎり、速度は速度にすぎない。ほぼ光速で進んでいても、無重力状態でいられる。ソロモンを苦しめているのは速度の増分だ。加速だ。変化だ。ヨットは、1秒ごとに秒速68メートルずつ速くなっている。それ以上かもしれない。たぶんそれ以上だ」(SFマガジン2013年5月号p.55)
自作の新型エンジンを取り付けた小型宇宙船の試運転に挑んだ火星のエンジニア。ところがあまりの加速に予想外のGがかかり、腕を動かすことさえ出来ない。エンジン非常停止ボタンは目の前にあるというのに・・・。
「外部カメラの映像のなかでフォボスがあっというまに小さくなる。そのあとは星野しか映らない。(中略)2分後、残量は89.5になる。2分半後、89.4。このペースだと、噴射は37時間以上続き、最終的な速度は光速の5パーセント弱ということになる。ソロモンは不安になりはじめる」(SFマガジン2013年5月号p.49、50)
『タウ・ゼロ』(ポール・アンダースン)など「不測の事態により加速を止められなくなった暴走宇宙船」というアイデアは珍しくありませんが、それだけで最後まで突っ走るというのは凄い自信。乾いた短い文章を重ねて緊迫感を高めてゆく手法もうまく機能していて、一気読みしてしまいました。
いかにも手慣れた感じの短篇ですが、解説によると、あの『ハンターズ・ラン』の作者の一人ダニエル・エイブラハムと、(同じく『ハンターズ・ラン』の作者の一人でもある)ジョージ・R・R・マーティンのアシスタント、この二人の合作なのだそうで、ああ、なるほど。いかにも。
2011年11月25日の日記:『ハンターズ・ラン』
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2011-11-25
というわけで、本作と同じ背景世界を舞台にした長篇、『巨獣めざめる』にも期待したいと思います。
[掲載作品]
『エンジン』(ジェイムズ・S・A・コーリイ)
その『エンジン』(ジェイムズ・S・A・コーリイ)は、加速が止められなくなった宇宙船の暴走を扱ったハードSF短篇。
「速さは問題ではない。なにかにぶつからないかぎり、速度は速度にすぎない。ほぼ光速で進んでいても、無重力状態でいられる。ソロモンを苦しめているのは速度の増分だ。加速だ。変化だ。ヨットは、1秒ごとに秒速68メートルずつ速くなっている。それ以上かもしれない。たぶんそれ以上だ」(SFマガジン2013年5月号p.55)
自作の新型エンジンを取り付けた小型宇宙船の試運転に挑んだ火星のエンジニア。ところがあまりの加速に予想外のGがかかり、腕を動かすことさえ出来ない。エンジン非常停止ボタンは目の前にあるというのに・・・。
「外部カメラの映像のなかでフォボスがあっというまに小さくなる。そのあとは星野しか映らない。(中略)2分後、残量は89.5になる。2分半後、89.4。このペースだと、噴射は37時間以上続き、最終的な速度は光速の5パーセント弱ということになる。ソロモンは不安になりはじめる」(SFマガジン2013年5月号p.49、50)
『タウ・ゼロ』(ポール・アンダースン)など「不測の事態により加速を止められなくなった暴走宇宙船」というアイデアは珍しくありませんが、それだけで最後まで突っ走るというのは凄い自信。乾いた短い文章を重ねて緊迫感を高めてゆく手法もうまく機能していて、一気読みしてしまいました。
いかにも手慣れた感じの短篇ですが、解説によると、あの『ハンターズ・ラン』の作者の一人ダニエル・エイブラハムと、(同じく『ハンターズ・ラン』の作者の一人でもある)ジョージ・R・R・マーティンのアシスタント、この二人の合作なのだそうで、ああ、なるほど。いかにも。
2011年11月25日の日記:『ハンターズ・ラン』
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2011-11-25
というわけで、本作と同じ背景世界を舞台にした長篇、『巨獣めざめる』にも期待したいと思います。
[掲載作品]
『エンジン』(ジェイムズ・S・A・コーリイ)
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