『SFマガジン2013年2月号 日本作家特集』(宮内悠介) [読書(SF)]
SFマガジン2013年2月号は「日本作家特集」ということで、日本作家の読み切り短篇を掲載。また、SFマガジン2012年7月号に掲載された『マッド・サイエンティストの娘たち』で話題となったシオドラ・ゴスの短篇を掲載してくれました。
『コラボレーション』(藤井太洋)。
「事なかれ主義の日本人が放置したサーバー群は修復機構を抱え込んだまま大量に放置されていて、圧倒的な密度で今も生きている」、「俺の身体はプログラムが動く喜びを覚えていた」。
その昔、自分が書いたプログラムがレガシーインターネット上でまだ動いているのを見つけた主人公。懐かしさのあまりソースコードを開いてみたところ、コードが大幅に書き換えられた上に、量子演算用モデリング言語で書かれたモジュールまで組み込まれていることを発見する。
誰が手を加えたのか。その謎を追ううちに、それが歴史的な「インターネット崩壊」事件とつながっていることが判明して・・・。ハッカーの気質と高揚感を見事に描いてみせた近未来SF。
『エコーの中でもう一度』(オキシタケヒコ)。
「回り込み、跳ね返り、拡散し、消え入りながらも耳に届く、象られた世界の形」。
失踪した音楽家が残した伝言メッセージを分析することで、その居場所を見つけてほしい。奇妙な依頼を受けた音響技術者が思いついたクールなアイデア。環境音解析技術とエコーロケーション(反響定位)能力が結びついたとき、新たな仮想現実が現出する。軽快でポップな語り口で書かれた知覚拡張SF。
『ハドラマウトの道化たち』(宮内悠介)。
「一方は画一的な伝統を掲げるが、その教義は多様そのものだ。もう一方は多様性を掲げるが、実態は別種の画一性でしかない」、「我々は、DXに人格を転写してから自爆攻撃をしかける」。
南アフリカを舞台とした『ヨハネスブルグの天使たち』(SFマガジン2012年2月号掲載)、ニューヨークを舞台とした『ロワーサイドの幽霊たち』(SFマガジン2012年8月号掲載)、アフガニスタンを舞台とした『ジャララバードの兵士たち』(SFマガジン2012年11月号掲載)に続くシリーズ第四弾。
今回は、中東のイエメンが舞台となります。イスラムをめぐって思想的に対立する二つのグループ。片方を支援する米国から送り込まれた戦闘部隊を率いる主人公は、敵地への偵察を試みるが・・・。
人間をうつす鏡のようなDX型アンドロイドという設定を用いて、思想対立や宗教対立が果てしなく混迷している現代を描いています。ストーリー的には『ジャララバードの兵士たち』の続編で、あの生物兵器が再び登場。なお、今回もDXは落下します。これまでのシリーズ四篇に書き下ろし一篇を加えて単行本化されるとのことで、待ち遠しい限りです。
『クリストファー・レイヴン』(シオドラ・ゴス)。
「思えばコリングズウッド最後の年に経験したことが、わたしたち四人の絆を強めたのかもしれない」、「どちらが幽霊だったのかしら?」。
ヴィクトリア朝の女子寄宿学校にて、同室となった四名の娘たちが同じ詩人の夢を見るようになる。協力して夢の謎を探ってゆくうちに、次第に過去の悲劇が明らかになって・・・。
ヴィクトリア朝の英国を舞台に若い娘たちの軽妙な会話で読ませるという、いかにも『マッド・サイエンティストの娘たち』(SFマガジン2012年7月号掲載)の作者らしい作品。SF色はありませんが、古めかしい英国幽霊譚と軽快なガールズトークの組み合わせが効果的で、大いに楽しめます。
[掲載作品]
『コラボレーション』(藤井太洋)
『エコーの中でもう一度』(オキシタケヒコ)
『ハドラマウトの道化たち』(宮内悠介)
『クリストファー・レイヴン』(シオドラ・ゴス)
『コラボレーション』(藤井太洋)。
「事なかれ主義の日本人が放置したサーバー群は修復機構を抱え込んだまま大量に放置されていて、圧倒的な密度で今も生きている」、「俺の身体はプログラムが動く喜びを覚えていた」。
その昔、自分が書いたプログラムがレガシーインターネット上でまだ動いているのを見つけた主人公。懐かしさのあまりソースコードを開いてみたところ、コードが大幅に書き換えられた上に、量子演算用モデリング言語で書かれたモジュールまで組み込まれていることを発見する。
誰が手を加えたのか。その謎を追ううちに、それが歴史的な「インターネット崩壊」事件とつながっていることが判明して・・・。ハッカーの気質と高揚感を見事に描いてみせた近未来SF。
『エコーの中でもう一度』(オキシタケヒコ)。
「回り込み、跳ね返り、拡散し、消え入りながらも耳に届く、象られた世界の形」。
失踪した音楽家が残した伝言メッセージを分析することで、その居場所を見つけてほしい。奇妙な依頼を受けた音響技術者が思いついたクールなアイデア。環境音解析技術とエコーロケーション(反響定位)能力が結びついたとき、新たな仮想現実が現出する。軽快でポップな語り口で書かれた知覚拡張SF。
『ハドラマウトの道化たち』(宮内悠介)。
「一方は画一的な伝統を掲げるが、その教義は多様そのものだ。もう一方は多様性を掲げるが、実態は別種の画一性でしかない」、「我々は、DXに人格を転写してから自爆攻撃をしかける」。
南アフリカを舞台とした『ヨハネスブルグの天使たち』(SFマガジン2012年2月号掲載)、ニューヨークを舞台とした『ロワーサイドの幽霊たち』(SFマガジン2012年8月号掲載)、アフガニスタンを舞台とした『ジャララバードの兵士たち』(SFマガジン2012年11月号掲載)に続くシリーズ第四弾。
今回は、中東のイエメンが舞台となります。イスラムをめぐって思想的に対立する二つのグループ。片方を支援する米国から送り込まれた戦闘部隊を率いる主人公は、敵地への偵察を試みるが・・・。
人間をうつす鏡のようなDX型アンドロイドという設定を用いて、思想対立や宗教対立が果てしなく混迷している現代を描いています。ストーリー的には『ジャララバードの兵士たち』の続編で、あの生物兵器が再び登場。なお、今回もDXは落下します。これまでのシリーズ四篇に書き下ろし一篇を加えて単行本化されるとのことで、待ち遠しい限りです。
『クリストファー・レイヴン』(シオドラ・ゴス)。
「思えばコリングズウッド最後の年に経験したことが、わたしたち四人の絆を強めたのかもしれない」、「どちらが幽霊だったのかしら?」。
ヴィクトリア朝の女子寄宿学校にて、同室となった四名の娘たちが同じ詩人の夢を見るようになる。協力して夢の謎を探ってゆくうちに、次第に過去の悲劇が明らかになって・・・。
ヴィクトリア朝の英国を舞台に若い娘たちの軽妙な会話で読ませるという、いかにも『マッド・サイエンティストの娘たち』(SFマガジン2012年7月号掲載)の作者らしい作品。SF色はありませんが、古めかしい英国幽霊譚と軽快なガールズトークの組み合わせが効果的で、大いに楽しめます。
[掲載作品]
『コラボレーション』(藤井太洋)
『エコーの中でもう一度』(オキシタケヒコ)
『ハドラマウトの道化たち』(宮内悠介)
『クリストファー・レイヴン』(シオドラ・ゴス)
2012-12-28 17:39
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