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『ランキングの罠』(田村秀) [読書(教養)]

 「これだけ毎日のように新聞やテレビ、インターネット上でランキングが頻繁に取り上げられる国は日本の他にはないのではなかろうか。(中略)見方を変えれば、日本人はランキング結果、すなわち順位付けがとても気になる国民性なのではないだろうか」(文庫版p.23)

 私たちのまわりにあふれている各種のランキングは、実際のところどのくらい信用できるのでしょうか。各国の国際競争力ランキングからミシュランガイドまで、具体的なランキングを取り上げてそれらがどのようにして作られたのかを詳しく解説すると共に、ランキングに振り回されないための心構えを伝授。Amazonでベストセラーランキング28位の話題作(*1)。文庫版(筑摩書房)出版は、2012年11月です。

 都道府県のうち最も暮らしやすいのは石川県。東京は世界の主要都市で最も物価が高い。日本人の英語力はアジアで最低。日本の治安は世界で36位。日本の国債はボツワナやチリよりも格下。

 でも、それって、本当なのでしょうか。

 本書は各種のランキングを取り上げて、それらがどんなデータをどのように加工して作られたものであるかを解説し、さらにそれらが必ずしも信用できるものではないことを明らかにしてくれる一冊です。

 取り上げられているランキングは、全国学力テスト、国際学力テストPISA、大学ランキング、TOEFL、国際競争力ランキング、国債の格付け、都道府県ランキング、世界生活費調査、企業の格付け、病院ランキング、芸能人ライキング、テレビ視聴率、食べログ、ミシュラン、観光地ランキング、FIFAランキング、などなど。

 これらのランキングがどのようにして算出されているかという情報だけでも面白いのですが、それがどれほど「いい加減」であるかの指摘が実に興味深い。

 「受けている受験者の質が国によって相当程度異なるため、このような結果になっているのであって、本当に英語力が劣るか否かについてはちゃんと客観的に調べないと何とも言えないのである」(文庫版p.94)

 「結局のところ、これも企業などへのコンサルティングを行うために必要なランキングであって、必ずしもそこに生活する住民の視点で比べられたものではないということに留意する必要があろう」(文庫版p.165)

 「国際競争力といっても経営者による自己評価がメインとなっているのである」(文庫版p.111)

 「もし、日本の企業が我が国の国際競争力の評価をさらに上げたいと思っているのであれば、もう少し自国の評価を他国並みに甘くしてみてはどうだろうか」(文庫版p.111)と痛烈な皮肉を飛ばしたり。

 都道府県ランキングでは、「ランキングを行った機関の所在都道府県が結果として比較的上位にきているものが多い」(文庫版p.133)という指摘には思わず笑ってしまいました。

 こうした課題があるにも関わらず、ランキングは大いに注目され、結果として様々な問題を引き起こしています。

 「ランキング結果が公表されると、マスコミなどが興味本位で取り上げることもあって大きな反響を呼び、結果だけが一人歩きしてしまいがちだ」(文庫版p.131)

 「都市ランキングが下がってしまったことが対立候補に厳しく糾弾され、結果として現職市長が落選したケースもある」(文庫版p.151)

 「格付けのあり方を調べてみると、これは単に格付け会社のモラルだけの問題にとどまらないことが分かってくる。(中略)本来は「一つの意見」にすぎないはずの格付けが、金融市場の中では、「天の声」となってしまっているかのようだ」(文庫版p.187、188)

 こうして著者は、ランキングを制作する側は元データと計算法を公開するべきだ、ランキングの結果に踊らされてはならない、ランキングの妥当性を評価する体制を作るべきだ、といった提言を行っています。説得力を感じます。

 というわけで、一読すれば、身の回りにあふれている各種ランキングを見る目が変わります。むやみに信用しないであくまで参考にとどめる、複数のランキングを突き合わせて比べてみる、元データが何であるか確認する、などの基本的なリテラシーを身につければ、ランキング結果にむやみに振り回される危険性を下げることが出来るでしょう。

*1:「統計法・人口統計・資源統計」の分野において。ちなみに本全体では140,470位。いずれも2012年12月27日現在。


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