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『おたる鳥をよぶ準備』(振付:黒田育世、出演:BATIK) [舞台(コンテンポラリーダンス)]

 2012年11月18日(日)は、夫婦で世田谷パブリックシアターに行って黒田育世さんの新作公演を鑑賞しました。BATIK結成10周年記念、上演時間なんと3時間(休憩20分含む)の大作です。

 BATIKメンバー全員で踊る第一部が145分、休憩20分、黒田育世さんがソロで踊る第二部が15分という、驚くべき長丁場。休憩時間中に舞台転換が行われ、観客は全員舞台側に移動し、観客席の中央に即席で設けられたテーブル上で黒田さんが踊るのを見上げるという。

 上から舞台を見下ろしてダンサーの「死」に立ち会う第一部、死んでしまったダンサーの昇天を下から見上げる第二部、ということでしょうか。身震いがします。

 この長時間、ほとんど常に踊っているという凄絶な舞台。最後は体力の限界を越えて命を振り絞るように踊るBATIKのダンサーたち。同じシーケンスを繰り返し繰り返し踊り続ける、その度に死んでゆく、その必死さに胸をつかれ涙が出てきます。

 緑色の舞台は、代表作『ペンダント・イヴ』を連想させます。というより、『ペンダント・イヴ』の次世代版というべきかも知れません。あのとき泣き叫ぶように互いの名を呼びあっていた子供たちが成長して母親となり、そして子供を失って悲嘆にくれている。そんな印象を受けます。『ペンダント・イヴ』と同じように名を叫ぶ場面(回想シーンでしょうか)では、こちらも思い出が込み上げてきて、気が遠くなりました。

 舞台からほとばしる痛み、叫び、絶望、悲嘆。圧倒的な感情のエネルギーが観客の心を打ちのめす作品です。数限りない、終わりなき死と悲劇を前に、人に何が出来るのか、ダンスに何が出来るのか、その問いに命がけで向き合う。言うのは簡単ですが、やっちゃうんだもんなあ。

 命を削る荒々しいダンス、必死で、限りなく切実なダンス、生きるためのダンス。そんな公演に立ち会う機会というのはそんなにありません。観ることが出来て本当に良かった。とはいえ、ドラム缶から出たり入ったりする黒田育世さんの顔が悪夢に出てきそう。

[キャスト]

構成・演出・振付: 黒田育世
音楽: 松本じろ
出演: 伊佐千明、植木美奈子、大江麻美子、梶本はるか、田中美沙子、寺西理恵、中津留絢香、西田弥生、矢嶋久美子、黒田育世


タグ:黒田育世
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