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『エリック』(ショーン・タン、岸本佐知子:訳) [読書(小説・詩)]

 「なんだか落ちつかない気配が家の中に漂っていた。何かが宙ぶらりんのような、何かやり残していることがあるような。そんな変な気分のまま、何時間かがすぎた。そしてついに、だれかが台所の戸棚の中にあれを見つけたのだ」

 『アライバル』、『遠い町から来た話』、『ロスト・シング』などの絵本、グラフィックノベルが大きな話題となったショーン・タン。その『遠い町から来た話』に収録されていた「エリック」を切り出して独立した小さな絵本に。単行本(河出書房新社)出版は、2012年10月です。

 わが家にやってきた何だかヘンテコで小さな交換留学生、エリック。ぼくたちは一生懸命に歓迎したけど、彼が喜んでいるのかどうかはよく分からない。エリックが興味を示すのはぼくたちが気にも止めない小さなものばかり。でも、母さんは、どんなにわけがわからないことでも、「きっとお国柄ね」とだけ言って、あっさりと受け入れてしまうのだった。

 『遠い町から来た話』(2011年10月17日の日記参照)に収録されている話のなかでもひときわ印象的だった「エリック」が、独立した単行本になりました。文庫本サイズで、きれいな青緑色をした、コンパクトな絵本です。

 内容的には『遠い町』収録バージョンとほぼ同一です。文章は、より細かく区切られてリズム感が変わっているものの、一語一句変わりません。絵は、サイズが変更されたり配置に変化があったりしますが、基本的に同じものです。ただ、ラストの見開きイラストに少し修正が加わり、それを受ける形で、最後にイラストが一枚追加されています。

 ほとんど同じものなので、既に『遠い町から来た話』をお持ちの方が、改めて手に入れる必要性は薄いかも知れません。ただ、コンパクトで綺麗な絵本なので、プレゼントにするのはアリですね。気に入ったら、『遠い町から来た話』や『アライバル』をお勧めするという手筈で。


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