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『カラマーゾフの兄弟(1)』(ドストエフスキー、翻訳:亀山郁夫) [読書(ファンタジー・ミステリ・他)]

 好色で露悪家の父親、激情的で粗暴な長男、インテリぶった尊大な次男、控えめで敬虔な三男。カラマーゾフ家では、金と女をめぐって見苦しい諍いが絶えなかった・・・。数年前にベストセラーとなった亀山郁夫さんの新訳カラマーゾフ、その第1巻。文庫版(光文社)出版は2006年9月です。

 おそらく世界で最も有名な長篇ミステリ。まずは第一巻を手に取りました。全体は四部構成(+エピローグ)となっていますが、その第一部に当たります。

 親子喧嘩と殺人を扱った辛気臭い話がどうしてこんなにウケるのか、昔から不思議に思っていましたが、実際に読みはじめてようやく納得しました。ヒロインたちがすごいの、何しろ。

 男の運命を狂わせる「妖艶な美女」グルーシェニカ、駄目な男をしっかり見守ってくれる「一途で健気な美人」カテリーナ、萌え萌え「病弱美少女(しかも幼なじみ)」リーズ、という具合に、もう全パターンをしっかり網羅!

 一方、男性キャラはどうかというと。これが。

 そこそこ財産はあるが教養も身分もなく、どうせ俺なんて皆の嫌われ者、別に好かれたいなんて思わないね、いっそもっと嫌われてやる、えい、えい、どうだっ、こんな見下げ果てたことをやっちゃうもんね、という「永野のりこ的なナニか」父フョードル。

 不遇な境遇ゆえに社会にも父親にも「貸し」があると感じており、どんなひどいことをされたって当然の報いだぜ、とか何とかすぐ言い出し、妬みでぐずぐず、激情的になって暴れる割に、根は臆病者という、「ネット人格くん乙」長男ドミートリー。

 変にインテリぶって人を見下し、他人のことに本当は無関心なだけなのに自分は知性派だから超然としている、てか神とか信じてる奴ってバッカじゃねえの、などと思っているのがバレバレな「痛ヲタ気質」次男イワン。

 そして、他人と争うのを嫌い、控えめでおとなしく、敬虔で信心深い、と周囲の人には思われているけど、実は色々と逃げているだけの甘やかされた無責任坊やじゃないかしら「軟弱ラノベの主人公にありがち」三男アリョーシャ。

 という具合に、こちらは「駄目な男」のパターンを網羅しているわけです。

 ダメな男が美人にモテモテ、しかも色々とバラエティ豊かにヒロイン取り揃えて、(執筆当時の基準では)激しいアクションシーンやスキャンダル満載、というわけですから、そりゃウケるわけです。今日まで使われ倒されている黄金パターンを創り出した古典って、やっぱり偉大です。

 というわけで、今さらでしょうが、第一部のあらすじ。

1. 修道院に集まったカラマーゾフ家の人々。見苦しい大喧嘩。

2. 帰宅したカラマーゾフ家の人々。見苦しい大喧嘩。

3. 二大ヒロイン、カテリーナとグルーシェニカ登場。見苦しい大喧嘩。

 意外にも、誰も殺されないまま、第二部へと続きます。


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