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『SFマガジン2011年9月号 特集:SFスタンダード100ガイド PART1』 [読書(SF)]

 SFマガジンの2011年9月号は、「特集:SFスタンダード100ガイド PART1」ということで、これだけは読んでおくべき基礎教養的必読海外SFリスト(1950年~1985年)を掲載すると共に、コードウェイナー・スミスの『アルファ・ラルファ大通り』を掲載してくれました。さらに『ダールグレン』の刊行に合わせて「サミュエル・R・ディレイニー再入門」を特集すると共に、『時は準宝石の螺旋のように』を掲載。

 『アルファ・ラルファ大通り』(コードウェイナー・スミス)は、あまりにも有名な未来史「人類補完機構」シリーズの一篇。「人類の再発見」時代の初期を背景としています。猫娘ク・メルが登場する作品で、本当かどうかはともかく「SF史上、はじめて猫耳美少女が登場した作品」としても知られています。

 しかし、改めて再読してみると、意外にもク・メルが出るシーンはごくわずか。何となくもっと活躍したような記憶があるのですが、たぶん『ノーストリリア』とごっちゃになっている。

 人類補完機構により完璧に保護された社会、その支配からの「解放」すら補完機構のコントロール下にある、というユートピアなのかディストピアなのかよく分からない奇怪で目眩を起こしそうな遠未来を舞台に、古代フランス人ごっこをしていた恋人たちが「自分の心は本物なのか、それとも補完機構によってプログラムされたものに過ぎないのか」を確かめるべく、アルファ・ラルファ大通りを経由して天空にある神託所に向かう、というような話。

 若いころに読んだときは、前半の古代フランスに込められた風刺が面白かったものです。(当時、フランス人というのは、実はみんな大真面目な顔で「フランス人ごっこ」をしている俳優なのではないか、と疑っていたのです私)

 『時は準宝石の螺旋のように』はサミュエル・R・ディレイニーの代表作の一つ。きらびやかな遠未来を舞台に、大物へとのし上がってゆく一人の犯罪者の姿を凝ったスタイルで書いたもの。

 わざとのように陳腐なストーリーはほとんどどうでもよく、そのスピーディでスタイリッシュな文章に引っ張り回される快感で読み進めるタイプの作品です。とにかく題名の輝きが凄い。忘れることの出来ない名タイトルの一つでしょう。

 両作品ともそれこそスタンダードSFなので、とりあえず未読の方はこの機会に読んでおくことをお勧めします。いずれも背景を同じくする長篇がありますので、前者が気に入った方は『ノーストリリア』へ、後者が気に入った方は『ダールグレン』へと、それぞれ読み進めるといいかと思います。


タグ:SFマガジン
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