SSブログ

『パチンコがアニメだらけになった理由(わけ)』(安藤健二) [読書(教養)]

 『封印作品の謎』に始まる封印シリーズで有名な安藤健二さんが、謎と禁忌に満ちたパチンコ業界の暗部に切り込んでゆく一冊。単行本出版は2011年1月です。

 まず「日本が世界に誇る漫画やアニメ産業の実態と、庶民の娯楽の代表パチンコ21兆円市場を結ぶタイアップ企画の、ちょっと表には出せないヤバい話」という帯のアオリが魅力的。好奇心がうずきます。

 なぜアニメ作品とタイアップしたパチンコ台が次々と登場するのか。しかも、決してメジャーとは言えない作品が選ばれることも多いのは、いったいなぜ。その背後にあるカラクリとは。

 「アニメについて書かれた本も、パチンコについて書かれた本も腐るほどあります。でも、アニメがパチンコ台になる理由は誰も書いてないんですよ!」(単行本p.10)という編集者の殺し文句に、思わず「やります」と答えてしまった著者。

 だが、著者の前に立ちはだかるのは、異様に口が固いパチンコ業界、そしてこの件に関しては徹底的に取材拒否してくるアニメ業界。両者を相手に、著者の孤軍奮闘は続く。そして少しずつ見えてくる真相。いっけん華やかなパチンコ業界とアニメ業界を覆う末期的状況が、次第にその姿を明らかにしてゆく。

 前半は取材の苦労話がメインとなり、判明した事情が後半で次々と明かされるという構成になっています。封印シリーズに比べるとややページ数の水増し感はあるものの、謎が謎を呼ぶサスペンスの盛り上げ方が巧みで、最後まで夢中になって一気読みしてしまいました。

 パチンコ業界とアニメ業界、それぞれの立場から見たタイアップ企画の必要性は割と簡単に明らかになりますが、その後の展開がまた凄い。この取材がきっかけとなって、ご都合主義的な警察の指導、パチンコホールの苦境、パチンコ愛好家の変質、アニメ制作会社のビジネスモデル破綻、2ちゃんねるの影響、など次々と問題点が明らかになってゆきます。

 激減するパチンコ店とパチンコ人口、2005年をピークにわずか4年で3/4ほどに縮小したアニメ映像ソフトの売上など、データから垣間見える深刻な事情。タイアップ企画は、まるで両業界の断末魔のもがきのようにも思えてきます。

 というわけで、タイトルに惹かれて素朴な好奇心で読むも良し、パチンコ業界とアニメ業界が置かれている状況を知るために読むも良し、封印シリーズの変化球として著者の見事な手際を楽しむも良し。どう読んでも面白い、刺激的なルポルタージュでした。


タグ:安藤健二
nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:[必須]
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

トラックバック 0