SSブログ

『くるみ割り人形(ヘルギ・トマソン版)』(ヤンヤン・タン、サンフランシスコ・バレエ団) [映像(バレエ)]

 サンフランシスコ・バレエ団の芸術監督ヘルギ・トマソン改訂振付による『くるみ割り人形』全幕公演の市販映像。2007年12月、ウォー・メモリアル・オペラハウスにて収録されました。

 トマソン改訂版といってもそれほど大きな変更は加えられていません。不気味な雰囲気やフロイト的な深読みを要求する演出はなく、おとぎ話・子供の夢物語として素直に楽しめるバージョンです。舞台がご当地サンフランシスコに設定されているのはご愛嬌。ちなみに二幕の「お菓子の国」はサンフランシスコ万博(1915年)がモデルとのこと。

 一幕の最後、というか二幕とのつなぎの場面というか、他の演出ではときに印象が薄くなりがちな「雪の女王」のシーンにものすごくリキが入っているのもトマソン版の特徴の一つでしょう。

 何しろ「雪の女王」を踊るのがヤンヤン・タン(譚元元)なのです。相手役としてピエール=フランソワ・ヴィラノバが、他の版ではなかなかお目にかかれないと思われる「雪の王様」役で登場してパ・ド・ドゥを踊ります。すげえ豪華キャスト。

 にぎやかな雪の群舞をバックに、ヤンヤン・タンはすらりと伸びたその長い手足を存分に活かして、華麗かつ威厳あふれる雪の女王を踊ってくれます。目にも止まらぬ高速スピン、直後にビシッと決める美しいポーズ。貫祿たっぷりで、何しろ爽快です。ヤンヤン・タンは実にカッコいい。

 女王が踊るにつれて雪がどんどん激しく降ってきて、しまいには吹雪の様相を呈してくる(ヤンヤン・タンの頭も雪まみれ、クララは雪山遭難して死に際の幻覚を見ているようにしか思えない)のが可笑しいのですが、実はこの演出、サンフランシスコには雪が降らないため「一度も雪を見たことのない」観客のための大サービスなんだそうです。

 二幕のクライマックスであるパ・ド・ドゥを踊るのはマリア・コチェトコワ。いかにもロシアバレリーナ風の豪華なたたずまいで、個人的には、ちょっと古めかしい感じがして印象薄いのですが。

 というわけで、作品としての解釈とか何とか野暮なことは言いっこなし、とにかく大人も子供も楽しんで頂きましょう、オペラじゃなくてブロードウェイがライバルですから、観客が期待しているのはディズニーですから、という心意気の感じられる、豪華にそつなくまとめてきた舞台でした。とりあえずヤンヤン・タンが素敵。

[キャスト]

クララ: エリザベス・パウェル
ドロッセルマイヤー: ダミアン・スミス
くるみ割り人形/王子: ダヴィット・カラペティアン
雪の女王: ヤンヤン・タン
雪の王様: ピエール=フランソワ・ヴィラノバ
シュガープラムの精: ヴァネッサ・ザホリアン
グラン・パ・ド・ドゥを踊るクララ: マリア・コチェトコワ


nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:演劇

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:[必須]
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

トラックバック 0