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『ロメオとジュリエット』(吉田都、英国ロイヤルバレエ、NHK教育「芸術劇場」) [映像(バレエ)]

 2010年11月19日のNHK教育「芸術劇場」では、吉田都さんの英国ロイヤルバレエ引退公演となった、今年6月29日の東京文化会館における『ロメオとジュリエット』全幕を放映してくれました。

 吉田都さんが踊った最後のジュリエット。これがもう本当に素晴らしくて、頭上にすっと伸ばした指先はその完璧な美しさで、後ろに曲げた足先はその奇跡のような動きで、観客を魅了します。比類ない強靱なテクニックに支えられた表現はもはや神業としか言いようがなく、ステップと演技が一体となって、驚くほど説得力豊かなジュリエットを舞台上に現出せしめていました。鳥肌が立つ。

 相手役のスティーヴン・マックレーは、こしゃくなほどスマートで爽やかな好青年。最初見たとき、吉田都さんの引退公演の相手役に抜擢されたのがこんな若手なのか、と驚きましたが、それが余裕たっぷりにロメオを踊り、きっちり吉田都さんを支えていて感心させられました。ものすごい高度なテクニックをいやみなくさらりと披露して観客を沸かせるところなど、スターの貫祿充分で好感が持てます。

 2003年のローザンヌ国際バレエコンクールの映像を観た方なら、そのとき何とタップダンスを軽やかに踊って観客の度肝を抜いてみせたスタイル抜群の少年のことを覚えておられることでしょう。あれ、あいつですよ、スティーヴン・マックレー。あの生意気な小僧がもう英国ロイヤルバレエのプリンシパルの座まで駆け上り、吉田都さんの引退公演の相手役を獲得したのだから、まったく才能というものは恐ろしい。

 主演の二人はもとより、主演者全員に気合が入りまくっていて、まあここは流して、という気を抜けるシーンがなく、最後まで気迫に満ちた舞台でした。群舞も立派。個人的には、衣装の渋い色彩に感銘を受けました。全体的に照明が暗めで薄闇に沈みこむような舞台に、このシックな衣装が実にはえて、雰囲気抜群でした。

 それと映像作品としての品質も絶賛に値すると思います。衣装のひだ、うす闇の奥行きまでくっきり見える高画質、演出意図をよく理解したカメラワークや編集の巧みさ、丁寧な作り込みによって、舞台上の空気感までがリアルに伝わってきて感動しました。

 カーテンコールまできっちり放映してくれたのも嬉しい。駆けつけたジョナサン・コープの姿が映ったときには、一つの時代の終わりをしみじみと実感して、こう、こみ上げてくるものがありました。

 吉田都さんの引退公演ということを別にしても、バレエ『ロメオとジュリエット』の舞台映像としてお勧めです。

 というわけで吉田都さんは引退してしまったわけですが、これからも舞台で彼女を観る機会もあるでしょうし、それに英国ロイヤルバレエには吉田都さんの後継者(だと個人的に期待している)崔由姫(Yuhui Choe、チェ・ユヒ/チェ・ユフィ)さんがいます。そういえばスティーヴン・マックレーは崔由姫さんとパートナーを組むことが多いそうで、よし、これからはこの二人に期待だ。というか二人の舞台を観たい。


英国ロイヤル・バレエ団 『ロメオとジュリエット』全3幕
収録: 2010年 6月29日 東京文化会館
放映: 2010年11月19日 NHK教育「芸術劇場」

[キャスト]

ジュリエット: 吉田都
ロメオ: スティーヴン・マックレー
ティボルト: トーマス・ホワイトヘッド
べンヴォーリオ: セルゲイ・ポルーニン
パリス: ヨハネス・ステパネク

管弦楽: 東京フィルハーモニー交響楽団
指揮: ボリス・グルージン


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