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『宮城能鳳(人間国宝) 琉球舞踊集』 [映像(映画・ドキュメンタリー)]

 コロムビア創立100周年記念として制作された、国指定重要無形文化財「琉球舞踊」保持者に認定された宮城能鳳の舞を収録したDVD三枚組セットです。収録は2009年12月。

 『テンペスト』や『トロイメライ』といった池上永一さんの作品においては、琉球舞踊がとても大切な役目を背負って登場します。あるときは冊封使をもてなす外交手段として、あるときは舞手として名声を得るため、またあるときは真心や想いを表すために、舞台でも宮中でも街角でも、琉球民謡の調べにのせて人々は舞い、踊るのです。

 この琉球舞踊というのは、どのようなダンスなのでしょうか。『トロイメライ』を読んでいてふと気になったので、実際に映像で確認してみることにしました。人間国宝に認定された宮城能鳳による琉球舞踊の映像集です。

 DVD三枚組で、ディスク1には「老人踊」、「若衆踊」、「二歳踊」と呼ばれる古典舞踊が七曲収録されています。祝賀舞踊、儀式舞踊であり、華やかで厳粛な雰囲気の踊りです。

 ディスク2には「女踊」が七曲収録されています。これも古典舞踊で、男性舞手が女性の着物をつけ、繊細な身振りや動きにより、心の動きを丹念に描写してゆく踊りです。

 ディスク3には、琉球王国滅亡後、明治時代以降に創作された近代舞踊である「雑踊」が八曲収録されています。古典舞踊と比べてテンポが早く、リズミカルで活き活きとした庶民的な印象を与える踊りです。

 いずれも収録場所は小さなホール(国立劇場おきなわ小劇場)。背景に美しい垂れ幕がかかっている他には特に大道具などはなく(ちなみに「雑踊」では、この垂れ幕もありません)、琉球民謡の調べに乗せて舞手が登場し、素手で、あるいは花や傘や扇子などの小道具を手に踊り、終わると舞台袖に戻ってゆく。エンターティメントというより、学術的な記録フィルムという側面を強く感じさせるストイックな映像です。

 何といっても印象的なのは、舞手が着ている着物の美しさでしょう。特に「女踊」の艶やかで美しい衣服、「雑踊」のセンスの良い着物柄など、登場した瞬間に目を奪われます。沖縄の伝統的デザインが好きな人は、この様々な着物だけでも鑑賞する価値があります。

 個人的には、軽快で親しみやすい「雑踊」が気に入ったのですが、最小限の動きで心理描写やストーリーを表現してのける「女踊」の、何というか、研ぎ澄まされた凄みにも忘れがたいものがあります。

 というわけで、琉球舞踊、琉球民謡、沖縄の伝統的デザインに興味がある方や、世界各地のフォークダンス(フォークロアダンス、民族舞踊)に興味がある方、そして『テンペスト』や『トロイメライ』の愛読者にお勧めします。


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