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『ふたたび、時事ネタ』(斎藤美奈子) [読書(随筆)]

 文芸評論家、斎藤美奈子さんが、2007年から2009年にかけて、『婦人公論』、『DAYS JAPAN』で連載した時事コラムをまとめた一冊。2007年に出版された『たまには、時事ネタ』の続編です。単行本出版は2010年6月。

 納豆ダイエットやらせ事件から事業仕分けまで、政権交代をはさんだ三年間に世間を騒がせた事件やら社会問題、政治問題を斬る辛口コラム、というわけですが、書かれている内容はごく常識的なもので、視点も特に斬新なものではなく、新鮮さや驚きは感じられません。

 もちろん、まともな発想でまともなことを書いてはいかんという法はないし、というかむしろ良識的でよろしいのですが、ううむ。

 やはり面白いのは、世間で話題になった書籍や文章を実際に読んで批評する回です。例えば『ミシュランガイド東京2008』であれば、それで大騒ぎしている世相を論じるのではなく、実際に同書をじっくり読んでガイドブックとしての出来を評価するのです。(もちろん星ゼロ評価)

 同様に『広辞苑第六版』の話題であれば、実際に第六版を手に入れて読んでみます。まずは重さを計って(2Kg)、新語をチェック。イケメンを「いけ面」と表記していることを批判し(メンは男性の複数形の意味も入っているのではないか)、石原慎太郎『太陽の季節』の説明文をあげつらい、最後は「辞書にはそれぞれ性格がある。『広辞苑 第六版』の性格は、懸命に新しぶっても教養と刷り込みがじゃまをする、元左翼にしてインテリのオジサン」(単行本p.107)と総括。わはは。

 とりあげるニュースでも、「読書離れ」といった話題になると筆致が生き生きとしてきます。「今の若者は本を読まない」と嘆いてみせる中高年のオジサンたちに向かって「昔の中高生と現代の中高生にちがいがあるとしたら、昔は「見栄を張る」という文化があったことだろう。読んでなくても立派そうな書名をあげておく、とか」(単行本p.150)と痛烈な皮肉をかまします。

 というわけで、文章批評と読書の話題になると本領発揮するあたり、やはり斎藤美奈子さんは文芸評論家だなあ、と。


タグ:斎藤美奈子
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