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『ハナシがうごく! 笑酔亭梅寿謎解噺4』(田中啓文) [読書(ファンタジー・ミステリ・他)]

 SFマガジン2010年2月号において編集部から「落語青春小説<笑酔亭梅寿>シリーズがヒット、(中略)著者とは思えない活躍ぶり」と冷やかされてた田中啓文さんの、一応ミステリー作品ということになっているのですが謎解きがない回も少なくない、とにかく人気シリーズその第四弾です。単行本出版は2010年2月。

 金髪トサカ頭の不良少年だった竜二が、ひょんなことから落語の師匠、笑酔亭梅寿に弟子入りして、殴られたり、しばかれたり、どつかれたりしながらも、ときには踏まれたり、蹴られたり、ぼこぼこにされたり、んでもって脳天を、もうええっちゅうねん、いつも散々な目にあいながらも、しだいに芸道に目覚めてゆき、やがて一人前の落語家を目指す、みたいな連作短編集。毎回、落語のネタをベースに話が展開します。

 今回は、竜二にCD化の話が来たり、TVドキュメンタリー番組へ出演したり、漫才の厳しさ面白さに刺激され落語から転向しようか真剣に悩んだりしているうちに、とうとう年季明けで師匠の家を追い出され、師匠は師匠で人間国宝に認定されるという話が舞い込んできて大騒ぎに。

 笑い、熱血、青春、謎解き、人情噺、など絶妙にブレンドされた楽しい短篇ばかりで、驚くべきことに退屈な話は一つもありません。死ぬほどくだらない駄洒落もないし、いや一つありましたが大抵の読者は読みとばしてなかったことにするでしょう、安心して読めます。

 一冊の本としての構成も見事に計算されています。いつものキャラクターの掛け合いで読者を楽しませつつ、前半でいくつも伏線を張っておき、後半になって仕掛け花火のように次々と伏線が弾けてどどーんっとクライマックス。痛快、痛快。

 というわけで、誰が読んでも面白い傑作短編集。出来れば最初からシリーズを通して読んだ方がいいのですが、ストーリーは一冊ごとに独立しているので、いきなり本書から読んでもたぶん大丈夫。田中啓文さんの作品ははじめてという方にもお勧めします。

 ちなみに、グロもナンセンスも駄洒落もオカルトもない田中啓文なんて読む気にならんとおっしゃるえぐい読者には、えっと、蘇我家馬子(UMAハンター馬子)の名がちらりと出てきますよ、などとささやいてみる。


タグ:田中啓文
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