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『宵山万華鏡』(森見登美彦) [読書(小説・詩)]

 京都を舞台にクサレ大学生どもが無用な試練にあたふたする妄想話を書かせれば日本一、いやおそらく世界一の作家、モリミーこと森見登美彦の最新刊です。

 今作は、京都・祇園祭宵山の一夜(必ずしも一夜ではないのですが)に、様々な登場人物が体験する不思議な出来事を描いた連作短編集です。1つの話をそれぞれ視点人物を変えた2本の短編で書く。この対となるペア短編が3組、すなわち3つの話、6つの短編、というのが全体構成です。

 最初と最後のペア短編がそれぞれプロローグ、エピローグとして置かれ、その間に、クサレ大学生どもの無用な試練を書いたペア短編、『きつねのはなし』を思い出させるちょっと怖い幻想譚を書いたペア短編がはさまっています。各短編が微妙にリンクしてくるあたりはいつもの手口ですが、鮮やかです。

 言うまでもなく、この全体構造は万華鏡を意識しているようです。最初の短編と最後の短編をつなげれば、3つのペア短編が互いをうつす幻想宵山万華鏡が完成するというわけですね。

 で、この笑いと畏怖、妄想と幻想、祭りの喧騒と京の闇が織りなす万華鏡という趣向が実に見事に決まっていて、うううむモリミーめ、「おっぱい万歳」とかいって人を油断させておいて、こういう素敵なファンタジーを書くとは。

 というわけで、6本のうちクサレ大学生の話は2本だけ、4本は闇深きあやかし幻想譚なので、『きつねのはなし』の雰囲気が気に入った読者はもう間違いなく必読でしょう。また、心の底でどっかモリミーをナメていた読者も、というかそれは私、改めて作家モリミーの力量に感嘆させられる傑作だと思います。地味なんですけど。


タグ:森見登美彦
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