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『WHITE』(クラウド・ゲイト・ダンスシアター、雲門舞集) [舞台(コンテンポラリーダンス)]

 台湾を代表するコンテンポラリーダンスカンパニー、「クラウド・ゲイト・ダンスシアター(雲門舞集)」の新作を観るために、夫婦で渋谷Bunkamuraオーチャードホールへ行ってきました。

 『WHITE』というタイトルは、ダンサー全員が白装束で踊るということ、舞台背景が白黒で無彩色だということの他に、おそらく「高度に抽象化された(特定の意味や文化色を排した)ダンス」という意味も込められているのではないかと思います。

 三部構成で、もともとは独立した作品だった第I部をもとに、第II部および第III部を加えて全体を再構成したものだそうです。

 第I部は、たて笛の奏者と3名のダンサーが登場する舞台。いくつもの白い垂れ幕というか巻物というか掛け軸のようなものが天井からするすると下がってきて、無機質な真っ白い空間を作り出します。そこで断続的に奏でられる笛の音(尺八のような響き)をバックに、静かなダンスが繰り広げられるのです。

 このパートは実に落ち着いた雰囲気で、旧作『竹夢』における夜明けのパート、太陽が地平線から昇るにつれて立ち込めていた朝霧が次第に消えてゆく情景を描いたダンスを思い出させてくれます。たて笛の音が静かに響くなか、ダンサーたちはゆっくりゆっくり夢幻のように動いて、気配を作り出してゆくのです。

 休憩をはさんで第II部が始まると、いきなり舞台背景は重苦しい黒に塗りつぶされ、上から覆い被さる黒い垂れ幕の重圧の下、複数の白装束のダンサーたちが深海魚のようにゆらめきます。ときどき、しゅっ、と鋭い動きが出たり。静と動の対比が素晴らしい。

 やがて黒幕が全て取り払われ、白く輝く背景をバックに今度はダンサーたちが黒い影となって動き続けます。シルエットのホーズがびっくりするほど美しい。そのまま第III部に突入して、白い空間に多数のダンサーが入り乱れ、流れるような素早い動きで劇的なクライマックスを迎えるのです。

 モダンダンスと太極拳を組み合わせたような独特の動きは目茶苦茶クールで、観るたびに胸がすくような思いです。この動きがもう好きで好きで。あと第III部の音楽、権代敦彦さん作曲『終わりのはじまり/終わりのあとで』が異様な迫力で、大いに気に入りました。

 第II部の後半から第III部の盛り上がりは尋常ではなく、とにかくノンストップで凄いダンスが次々と繰り出され、一息つく余裕もありません。同時に多数のダンサーが別々の動きをするので、またそれがどれもカッコイイ動きなので、あちこちに視点を動かして必死で追いかけることになります。一度では全然つかめた感じがしないので、出来れば何度も観たい。

 余談ですが、オーチャードホールの1階席は、とにかく見づらいのが残念。舞台が高いので、前の方の席だとダンサーの足首から下が見えない。客席の段差が少ないので、後ろの方の席だと前の観客の頭が邪魔で舞台全体が見えない。とにかく欲求不満がたまります。個人的には、好きな劇場ではありません。 

タグ:雲門舞集
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