SSブログ

『忘却の船に流れは光』(田中啓文) [読書(SF)]

 リハビリのために少しずつSFを読んでゆきます。今回は田中啓文の本格SFに挑戦。ハヤカワJコレクションの一冊として刊行された単行本を、文庫化したものです。

 まず、「文庫版のためのあとがき」に注目。「~でしゅ」「ぴぎゃー」など変な言葉づかいで何ページも書いた挙げ句、なんでこんな口調なのかというと出版社から「文庫版・のだめのあとがき」を書けと言われたので、というオチ・・・。

 ここで「わっはっはっ、田中クンの言うことはいつも面白いねえ」と感心するような人でないと、彼の本を読むのはつらいかも知れません。

 そういう人でも、達人レベル、例えば難波弘之にまでなると「SFの面を被った凍りつくほど寒いオヤジギャグが書きたいだけなのだ。田中は! この時間泥棒! 死ね!」とまで絶賛しちゃうわけです。

 さて本書は、過度にグロ描写を交えつつ(これは関西いちびりSFの癖なので仕方ありません)、クラーク『都市と星』のパクリ、じゃなくて、おまんじゅうをやった本格SF。

 せっかくの本格SFだというのに、長編だというのに、Jコレクションだというのに、やっぱり最後は駄洒落で落として何もかも台無しにするという、ある意味清々しい脱力感。

 解説は冬樹蛉さん。古典SFの王道パターンがいかに魅力的であるかを熱く語っています。ここが本書の一番の読み所かも知れません。

 冬樹さん、いい人なのに、何だか関西いちびりSF作家連中に関わって人生損をしているような気がしてなりません。

 そして、せっかく読んだのにあんまりSFリハビリにならなかったような気がしてなりません。

タグ:田中啓文
nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:[必須]
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0