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『ベスト・オブ・モーリス・ベジャール 愛、それはダンス』(モーリス・ベジャール) [映像(コンテンポラリーダンス)]

 「愛、それはダンス」というタイトルだけで「だ、ダサ~~」とへなへな脱力してしまいそうになりますが、これはいわゆる“駄目邦題”ではなくて、原題の直訳です。うううむ。

 舞踏評論家の乗越たかお氏をして「ダサさと紙一重のカッコよさと紙一重のやっぱりダサさ? みたいなところがベジャールの凄さだろう」と言わしめた、フランス流ダサバレエ界の頂点に立つ振付家、モーリス・ベジャールの2005年の公演を収録したDVDです。

 何でも、生誕80周年を記念して、過去の作品から「愛」をテーマにセレクトしたシーンを集めて1つの舞台に再構成したそうで、とうてい正気ではやれそうにないことを真剣にやってのけるのがベジャールの凄味。

 で、初期作品『春の祭典』『ロミオとジュリエット』あたりまでは、あまりのベタぶりに腰が抜けそうになりましたが、だんだんとボルテージが上がってゆき、前半のラスト、『ブレルとバルバラ』におけるジル・ロマンの踊りを観たときには、ちょっと震えが走りました。

 ジル・ロマンは後半も大活躍。新作『二つの大戦の間』のソロで頂点に達したかと思うと、そのままいきなり名作『バレエ・フォー・ライフ』に移って、エリザベット・ロスの超絶的ソロが炸裂するという、このあざとい構成。

 ベタな演出、ダサい振付、垢抜けないことこの上ない舞台にも関わらず、不覚にも感動してしまいました。音楽が、ヨハン・シュトラウス、U2、クイーンでも、もういいんです。構わないんです。だってベジャールだもの。

 ラスト、舞台に登場したベジャールが、クイーン"Show Must Go On"に合わせて腕を突き上げるという、普通なら悶絶死もののダサい演出だって、許してしまいます。半世紀やってれば、ダサさも芸風。

 というわけで、ベジャールのセンスに耐えられない人も、ジル・ロマンとエリザベット・ロス、この二人の踊りを観るために観る価値があります。いや、本当に。

タグ:ベジャール
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