『ホミニッド －原人－』（ロバート・Ｊ・ソウヤー）

　伝説的な傑作『ゴールデン・フリース』を読んで衝撃を受けて以来、ソウヤーの翻訳本は全て読んでいるのですが、相変わらず上達しない作家です（いきなり結論）。

　本作はいわばソウヤーの集大成で、『フレームシフト』のネアンデルタール人、『フラッシュフォワード』の転移現象、『イリーガル・エイリアン』の裁判シーン、『アフサン』の異種族文化、それに『ターミナル・エクスペリメント』における宗教と道徳をめぐる議論、といったものを寄せ集めた作品。

　これだけ盛り沢山つめこんであるのに、ストーリーは平坦かつ凡庸、設定はご都合主義に過ぎるし、登場人物は薄っぺらく、ＳＦ的な大ネタにも欠けており、何より小説としての出来がよろしくありません。ラストは、これがシリーズ第一作であり続きが書かれているという点を割り引いても、まったくの拍子抜けです。

　これだけの欠点にも関わらず、なんででしょうかねぇ、“それがソウヤーの持ち味”としか言いようがありません。下手だけど一所懸命に書いている、ＳＦが本当に好きで書いている、そんな感じがひしひしと伝わってきて、どうしても嫌いになれません。

　そういうわけで、ソウヤーのファン以外にはオススメ出来ませんが、私としては早く続きが読みたいです。この作家、第一作目だけ訳されてそのまま放置されているシリーズもあるので、とても心配です。

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